公太郎
□スケープゴート2
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:タイショー
目が覚めた時にはもう、ハム太郎はいなかった。
身体中にこびりついた精液はきれいに拭いてあって、制服も破れているけどきちんと着せてある。
ゆっくり起き上がると、鈍い痛みとともに下半身にすごい違和感を感じた。
そうだ…俺様、ハム太郎に中出しされて───…
さすがにこればっかりはどうすることもできなかったのだろうか、それとも当てつけのつもりか、俺様の胎内にはハム太郎の精子が注ぎこまれたままだってことだ。
想像したとたんぞわりと鳥肌が立った。
別に女じゃあるまいし、それほどショックを受けないだろうと思っていたけど、こればっかりはさすがにへこむ。
くそ…ハム太郎め、散々やりやがって。
こんな状態じゃ、今日はバイトにも行けないだろう。
がっつり働いて少しでも多く稼ぎたいけど、こればっかりは仕方ない。
とりあえず早く帰って風呂に入りたい。
シャツの弾けた前を掻き合わせて、重い身体を引きずり家へと急いだ。
遠目からアパートを見て、自分の部屋が真っ暗なのを確認してほっと息をついた。
よかった…もう寝たみたいだ。
なだれ込むように玄関へ入り、いつも通り手探りでスイッチを押す。
明るくなり、いきなり目の前に現れた人影にぎょっとした。
──────ねてるだ。
「タイショー、くん…?」
だぼだぼのパジャマの袖で眼を擦りながら、舌足らずな声で俺様の名前を呼びながら近づいてくる。
「何、で…」
予想外の展開に戸惑いを隠せない。
「おかえり、遅かったね。なんか今日眠れなくて…ずっと、待ってたんだ」
いつもは俺様が帰る頃には気持ちよさそうに寝息を立てていて───…その寝顔を見ると、学校やバイトでどんなに疲れててもみんな吹き飛んでしまうのに。
何で今日に限って起きてるんだよ…!!
帰りを待っていてくれたねてるにたただいまって笑ってやるどころか、ばれるんじゃないかってビクビクして、まともに顔も見れない。
「どうしたの?服ボロボロだよ?それに、首…」
「ッ、触んなっ…!」
いたわるようにそっと伸びてきた腕を反射的に振り払ってしまった。
今優しくされたら、また泣いてしまいそうだったから。
「あ、ごめ、ん…」
ねてるが悲しそうに言って、重たい空気が部屋に流れる。
「…風呂、入ってくる」
耐えられなくなって、逃げるようにその場を後にした。
馬鹿みてぇ。
赤く腫れた眼に破けたシャツ、首筋のキスマークに思いっきり挙動不審な態度。
こんなん犯されましたって言ってるようなもんじゃねえか。
ねてるにも冷たく当たって、最低だよな。
でも、俺様のことを慕ってくれているあいつには悟られたくなかった。
ばれてないことを願おう。心配させたくないし、ねてるはこんな真実、受け止めるにはまだ幼すぎる。
…なんてな、本当は知られて軽蔑されるのが恐いんだ。
強がることしかできない、臆病な俺様を許してくれよ───。