巨人の長編

□第六話
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訓練兵団に所属して、早一か月が経った。成績ではミカサと共にトップを誇っているフレイヤだったが、順位は10位以内には入っていなかった。




理由としては、訓練が上手くいってない者、早くもキツイ訓練に続けていく自信を失いかけている者を助けることを優先して上官命令やらを無視した。成績より信頼を得る結果だった。



フレイヤ本人は成績に興味はない。10位以内に入れば憲兵団に入る権利が得られるだけで調査兵団志望のフレイヤには意味がなかった。




それでも、10番代を維持しているのは流石というべきだった




「なあ、お前は内地に行きたくはないのかよ?」



成績が優秀にも関わらず順位にこだわらないフレイヤに食堂で夕食を摂っていたジャンが疑問に思っていたようで問いかけた



「別に10位以内に入ったらどうなる?憲兵団に入る権利が得られるだけで、他にはなにもないだろ?」



「大体の奴はその憲兵団に入りたがってるんだよ。俺だってこの窮屈な最前線の町から脱出したいがために頑張ってんだ」



それは訓練兵のエレン以外の全員が疑問に思っていたことだった。
フレイヤなら真面目にやれば間違いなくトップになれるはずだった。




「…エレンにしか言ってなかったか?」



フレイヤはジャンの考えを否定しない。巨人が恐ろしいと感じるのは当然、遠ざかりたいと思うのもまた当然だ




「そういえば、俺以外に言ってないのか?」



「なんだよ、なんの話だ?」



全員が聞いていた。自分たちのリーダー的存在がなにを考えているのか知りたかったからだろう



「俺は調査兵団志望だ。ほかはどうでもいい」



「なっ!?お前もエレンと同じで外に行きたいってのかよ!?」



「ああ、それが俺の最大の願いだぜ」



「正気か!?エレンみたいに頭がいかれたか!?」



「オイ、こらどういう意味だてめぇ!」



すかさずエレンがジャンに向かって拳を放った。



「て、てめぇいきなりなにしやがる!」



そしていつもどうり喧嘩をはじめる二人だった



「…フレイヤも外に行きたいの?」



今度はミカサが話しかけてきた



「ああ、言ったろ。最大の願いだって」



「なんで?」



なんでか。それは…



『ねぇフレイヤ』



『なんだ?』



『フレイヤは外に行きたいんだよね?』



『ああ、絶対に行く。お前は行けないけど、その分、外の絵を沢山描いて見せてやるよ』



『ほんと?けど外には巨人がいっぱいいて危ないんだよ?ゆっくり描いてられないよ?』



『だったら巨人を倒してから描く』



『周りが血まみれで綺麗じゃなくなっちゃうね』



『むう、難しいな。』



『それでも行きたいんだ?』



『ああ、それがあの人の願いでもあるし、俺の願いにもなったからな』



『私も行ってみたいな』



『わかってる。だからお前の分も見てきたやる。いっぱい描いてきてやる』



『ありがと。それなら私に見せる為に絶対戻って来なきゃね』



『もちろんだ』



________




「フレイヤ?」



「自分のためと、大切な友達のためだ」



「友達?」



「ああ、約束したからよ。外の絵を沢山描いて見せてやるって」



「…そう」



そう、これは自分のためでもあるし、あいつのためでもある。
だから調査兵団にしか興味はない。順位なんて関係ない。



ここに来る少し前はもう意地みたくなっていたが。




「(意地は通してなんぼってもんだ)」



あの人なら、そう言う気がする
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