★星屑U★

□溺愛
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「すみませんちえさん
  今宜しいですか?」




いつものようにリフレッシュコーナーで台本に読み耽っていた私に
律儀に膝をつき、
彼女が話しかけてきた。



「うん、何?」



そしていつもの様に応えた私は、
ふわりと彼女から漂う今回の役の香りに間違いは無かったと、
選んであげた自分を密かに褒め称えた。



「あの、それ…」



「え?」



「それ…とって…。」






周囲に誰もいないことを知ったうえで、とは言え
こんな場所でこんな口調の彼女は珍しい。




「ん?」



「だからそれ…
 お願いだからはずして!」




小声ながら
それでも精一杯に語気を強める彼女の視線の先には
台本と、
それを持つ私の手。




「今日、この後のお稽古
 撮影入ってるんですっ
       だから…!」



「だから……?」




「んもうッ!」





怒ったその顔もやっぱり可愛い等とぼんやり見ていた私の左手を
彼女の小さな右手が握る。




「―――!?―――」



そして、



「あっ!ちょっ!!―――」







私の左手の人さし指から
強引に指輪を抜き取った。




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