★星屑★

□女神の条件
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    “不安”


その言葉を彼女の口から聞くのは、恐らくこれが初めてだ。










二人がこれから
この組を背負って行くということが発表される前日も

その胸の内は容易に推し量ることは出来たけれど
それを口にして私に伝えようとはしなかったし、



新しい時代の幕開けのその日でさえ


「なんだか
 ワクワクしますねっ!」


無邪気な笑顔で
そう言って、

ナーバスになっていた私を一瞬で解きほぐした。








私の記憶に誤りが無ければ

少なくともこの組に来てからの彼女はずっとそうだった。



好奇心と言う名の突き刺さる視線の中にあっても、

「楽しい」
「幸せ」
「嬉しい」


緊張の色は見せながらも

決して「不安」とは口にしなかった。




今にして思えばそれは

自分を奮い立たせる為の
彼女なりの不器用な方法だったのだろう。








そんな彼女を
強いと言う人もいる。

現代っ子と一言で片づける人もいる。



けれどこの一年
一番近くで見て来た私は

そんな彼女の…
   本当の彼女の、

笑顔の奥に隠した脆さを

解ってあげられていると、
根拠の無い自信を持っていた。







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