★星屑★

□勇気をください side-N
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コンコンッ――


「失礼します、夢咲です…」


―――――――。


まだ帰ってらっしゃらないのかな…。



全国ツアーも残すところあと数日に迫った北海道の夜、
私は柚希さんのお部屋の前に
一人佇んでいる。


―――――――。


うん。
しーらんのとこ、帰ろ。



くるっと踵を返したその時


ドタッ!ガチャガチャ――



「ハアっハアっ、ごめんごめん、
お風呂入っとった!」



髪からポタポタ雫を落としながら
バスローブを羽織ったちえさんが、
慌てた様子で扉を開けた。



「どしたん?
 まあいいわ、
 とにかく中入り。」


肩に掛けたタオルでクシャクシャと髪を拭きながら、私を招き入れてくださる。



「あ、いえ、ここで…」

「あーいやこんな格好やし、入って。」


ちえさんの後をついておずおずと中へ進むと
ほんの少しの煙草の香りと
やさしいアロマに包まれた。



「ごめんごめん、
 その辺座って。」

顎で示された先にある椅子に座る。


「すみません、
 変な時間に…」

「あー良いよー全然。
今日なあ、みんな出掛けてんけど、
あたしはなんとなく行くのやめてん。」


みんなって言うのはたぶん
シゲさん・マヨさんや、近い期の方達。
当たり前だけど、いつもちえさんと一緒に行動されてて何だかとても羨ましい。


「ほんでー?
ねねちゃんはどうしたん?」


ドサッとベッドに座る仕草とは裏腹に
甘えん坊の様な口調で尋ねられ、
それだけで、
緊張で固くなっていた私の心は温まる。


「あの、コレ今日ファンの方に頂いて…
並んでもなかなか買えない北海道のお菓子だそうなんですけど…
って、大した用じゃなくってすみません!」


「えー!?そんな貴重なんちえにもくれるん?」


にも…じゃなくて、
ちえさんに、です



お渡しして直ぐに帰ろうとすると


「なあなあ、
 一緒に食べよ?
 せっかくやし。」


上級生の、ましてやトップさんなのに
『かわいい』と思ってしまったのは
私だけのヒミツ





手早くお皿や飲み物を用意され
目の前の椅子に腰を下ろすちえさんを

なんでだろ…今日は真っ直ぐ見られない…



「さ、食べよ食べよ!
ねねちゃんも遠慮せんと食べー?
って、コレねねちゃんからやったわ〜」


ちえさんも
いつもより饒舌な気がするけれど、



それはきっと
都合の良い
私の思い過ごし。



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