★星屑★

□ホントの秘密
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私がここで
顔を近づけて…




「ねねちゃん、
  これやとしんどい?」



「いえ、大丈夫です☆」




にこっと笑ってみせるけど
むっちゃ体に
力入ってるやん。



「ん。
ちょっとは無理しないと
綺麗には見えへんし、ちょっとだけ頑張りーや?」



「はいっ☆」






………かわいい。






あ゛ーあかんあかん!
稽古や稽古!!!








ミョンヒョン山の場面。
一公演終わった今も
重なり合う瞬間を、
何度も繰り返し稽古する。





『ちえ〜、
ほんまにキスシーン
こだわってんなぁ(笑)』



とよこさんには、
ニヤっとされたけど。


いいねん。
そおやあ?
むっちゃむちゃこだわんねん。







「あ゛ーーっ!!」



「どっ、
  どうかされました!?」



「またやぁ〜。
またさゆみが覗いとった〜
どうせ又みんなに
  報告すんねんで〜」



「………」



「―――?」




ん?
その微妙な表情は、何?





「見られんの、
  恥ずかしいん?」




黙って首を横に振り、




「それも…
  そうなんですけど…」



「あ、分かったぁ!
 私とばっかり
    稽古すんのん、
    もう嫌なんや〜」




ちょっとふざけて言ってみたら、




「ちっ、違います!!!」




必死で否定する様子がまた可愛くて。




「ん?」




俯く彼女に少し近寄る。




「…ちえさんと……、
このお稽古ちえさんと…
二人だけの秘密っていう感じがして、いつも嬉しかったんです!
だから…
誰かに見られたりとかは、
ちょっとヤだなって。。。
  ―――スミマセン!!」




最後の方は、
勢いで言ってしまえとばかりに早口で。





そんな顔で、
  そんなこと言われたら



たまらんく…
   …なるやんか…








「こ、こんなスパルタで
      …いいん?」



「はいっ☆
もっとお願いしますっ♪」






あー…
その笑顔に、撃沈だ…







「け、稽古の続き、
     しよか!」

「はいっ、
   お願いします!」





鏡で二人の角度を確認しつつ、彼女の頬に手を添える。




そして最も深く重なった、

その時――――――――






―――パチンッ―――






夜も更け、
教室の照明が
一斉に落とされた。






と………





「「ん!?」」






「ゴ、ゴメン!!!」
「スミマセン!!!」





お互い慌てて
跳ぶように離れる。





今、完全に…
…ついた…よな!?


あたしの勘違い…
…じゃあ無さそう…
…やな…






「ほんまゴメン!」



「い、いえ!!
わ、私がタイミングを!」



「や!あたしが角度を!」





どっちも悪ないねん。
事故や、事故…







「…あ、あの…
こ、これは本当に…
秘密にしますからっ!」



「…別に秘密にしんくて…
 ――いいねんけど…」



「へっ!?」




思わず私の口をついて出た言葉に、
彼女は随分驚いてたけれど






   
    …もう…
  …止められへん…








廊下から漏れる光だけでも
充分に分かる程
赤く染まった頬に手を伸ばすと、
ピクリと肩を震わせ
        俯く君。







その顎に手をかけて
躊躇わずに重なった―――







わかるやろ?

これは、

事故でも稽古でも…

ないねんで?


だから―――




「これはまだ、

  ホントの秘密に

     しとこうな」









End
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