★星屑U★

□四重奏〜Quartet〜
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〜side T〜




ちえさんの手の中で
シュワシュワとはじける泡の音を聞きながら

私はどうしてもまた、
言わなくてもいいことを口にしたい衝動に駆られた。



「ちえさん―――」


「ん〜?」


「ねねちゃんから、
   聞きました?」


「ん〜?なにを〜〜?」



ひとつやり終えた充実感と
そこからひと時解放された安堵感からか、
強い筈のちえさんも
僅かに酔いが回っている様だ。





「聞いて無いんなら、
      いいや。」



けれども私は
いっこうに酔うことが出来ない。



「なによ〜
 言い掛けて途中で
  やめんといてよ〜」


「じゃあ言うけど――」


「う〜ん。」


「『好きだ』って
  言いましたよ
    ―――あたし。」








「――――――――え?」









人の酔いなんて、


醒ますのは簡単だ。







「言いました。
  もう一度、
   ねねちゃんに。」






「―――――――いつ?」




「舞台稽古の前。」



「なんでそんな時に!!!」


「なんか、言わずには
 いられなく
  なっちゃって」



不安そうだったから。

その役を生きること、

あなたの隣にいること。




結論などどうでもよくて
ただ、
そんな彼女を思い続けていると伝えることが
もしかしたら
あの時の彼女の力になる様な気がしたから。







「――――――そう。」







あなたらしい。

彼女が好きになった、
あなたらしい。

その場の感情で
私を責めたりは
しないんですね。




「でも大丈夫ですよ?
 自分が言われたのか
 ジュリエットが
    言われたのか
 いまいち分かって
 ないみたいだったし。」



そんな訳は無い。
彼女はそんなに
鈍感じゃない。

そんなこと、
ここに居る二人ともが
知っている。





「――――――――――」



「どうか…しました?」



「あっ……いや………」





ちえさんは
半分ほども残っていなかったグラスの中身を
まるで天井を仰ぎ見る様に
一気に空けた。









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