★星屑U★

□おあいこU
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新しい作品に使うアクセサリー探しに苦慮していた私に
自分の手持ちで合う物があるかもしれないからと
ちえさんが、お稽古後のお疲れの中、私をお部屋へと招いて下さった。







「ちょっと手伝って?」


棚に置かれた大きな箱を、二人で引っ張り出そうとしたその時


すぐ横に立て掛けられていた厚いアルバムがドサッと崩れ落ちて来た。



それと同時に、数え切れないほどのスナップ写真が、二人の目の前へと散らばる。



「あーーーもーお!
 整理しようしよう
    思ててんけどさ
 なかなかする時間
   無いんよなあ〜」


ブツブツ言いながら拾い集めるちえさんをお手伝いしようと、隣にしゃがんで伸ばした私の手の先には
よく知る大好きな笑顔が溢れていた。



私にも想い出深いお衣装を着て、下級生達に囲まれるちえさん。

同期の方に挟まれて、ちょっとだけ幼い表情のちえさん。

かなめさんと二人、ふざけ合うちえさん…


どれもみんな
この一年の想い出達。


そう、
整理する時間なんて無い。
それは私もおんなじだ。


それに…
整理するにはまだ早い。

そんな風に思っているのは
私だけ、なのかな…?






「あ〜もうめんどくさ。
ちょっと一服さして(笑)」


ちえさんは
その場から立ち上がると、


「それ見とっていーよ?
 多分エージェンシーの
  ばっかりやけど(笑)」


言い残して
キッチンへと向かわれた。


「はあーい」



お言葉に甘えて。



床にペタンと座り、膝の上で私はそれを、ゆっくり捲り始めた。








すると―――







「あ……」






どの頁を捲っても、その何処かで必ず笑っているその人を見付け

胸がギュッと苦しくなる。



少し考えればわかり切った事なのに、無防備に好きな人の想い出に触れた自分に後悔をした。







「…陽月さんが…
  いっぱいだ…」




心の中で留めた筈の一言が
知らぬ間に口をついて出る。






「そらそーやわあ、
 あんだけ
  組んだんやもん(笑)」




キッチンからひょこっと顔を出されたちえさんは、いつもと変わらぬ調子でそう言うと、両手に持ったマグカップの一つに口を付けながら、ゆっくりこちらに歩いて来る。



「そーです、よ…ね…」



知られたくない独り言を聞かれ口籠ると




「なにぃ!?
  妬いてんのん(笑)!?」




もう片方のマグカップを二人の間に置きながら座り、面白そうに私の顔を覗き見る。


けれど私はどうしても、それに笑顔で返すことが出来ず





「…別に…」





無愛想に返事をして
私の好きな甘さに整えられたコーヒーを、断りも無く喉の奥に流し込んだ。






「アハハハハッ!
 これでほんまの
  おあいこやなあ(笑)」






屈託なくおもいきり笑うちえさんの横で、両手でカップを握り締め




頬を寄せ合う二つの笑顔を見つめながら







―全然おあいこ
   なんかじゃない…―





――――心の中で呟いた。







End
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