★星屑V★

□トリセツ〜彼女の機嫌が悪い理由(ワケ)〜
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ところが話はそんなに簡単ではなかった。





「んもうっ
  はーなーしーてッ!!!」



「えッえーーーッ……」



いつも通り、少々強引にでも、あのまま唇を塞いでしまえば何とかなると思っていた私が甘かった。



「もう寝るッ!私寝るッ!」
  

「ちょっ!」


目の前で踵を返し背を向ける彼女の腕を掴み損ねる。


「オヤスミナサイッ!」


「ねっねねちゃあーんっ!」



好きな人に頭の上がらない、情けない私にたちまち逆戻りだ。


「ちょ!
 ちょっと待ってよぉ〜」


大慌てでブーツを脱ぎながら、部屋の中に戻って行く彼女を追う。



「なに!?なあホンマに何!?」


何とか追い越してその行く手を塞いだ。



そんな私にしかめっ面でだんまりを決め込む彼女。



何が彼女をそんなに怒らせているのか気になって仕方がない気持ち半分、
ならば早くその理由を言えと苛立つ気持ち半分、
それを的確に表す文章が口から出てこず、仕方なく私はこれ見よがしに溜息をついた。


すると彼女は観念したのか





「おしゃべりぃ…」




特有の尖らせた口で、彼女にしては大層低い声でこう言った。




「な、なにがあー」


「ちえさんの中に
 "秘密"って言葉は
   無いんですかッ!?」


「えー?…
  あ、あるよお…」


「ウソ」


「あるってえ」


「じゃあなんで
    いつもいつも
 ペラペラペラペラ
  喋っちゃうのッ!?!?」


「え゛ッ」




思い当たる節が無いではなかった。というか、思い当たる節だらけだった。
それにしても、今夜のことがもう彼女の耳に入っているとは恐るべしだ。



「ちえさんのおしゃべり」



駄目押しにもう一度言う。



「だ、だって
   訊かれてんもん!」



一応無駄な反論をした。



「訊かれたらなんでも
   喋っちゃうの!?」


「そーは…
 ゆーて…へんやん…」



けれどどう考えても悪いのは私なので、謝るまではもう、時間の問題だった。




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