★星屑U★

□揺れる想い
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稽古場の長椅子の下から引っ張り出した鞄を膝の上に載せ、
MDデッキを取り出した。




「フィナーレの稽古、
  いつすんだよ……」





時折起こる華やいだざわめきを遠くに聞きながら
めったに漏らすことの無い不満を一人口にすると





「す、すみませんっ、
みきに、言っておきます!」





後ろから、
声がした。





「いいよ、別にわざわざ。」






なんて嫌な上級生なんだと思いつつも、
こんな一番聞かれたくない言葉を聞かれたくない人に見付けられ
彼女を目の前に、
そうでもしなければ
他にこの場をやり過ごす方法がない。




「でも…」




「いいよ、ほんと。」






「――――――――。」
「――――――――。」









「そ、それじゃあ私――」




「―――しゃべ化粧、
     練習してる?」







当たり障りの無い質問で彼女を引き留めた自分の姑息さに嫌気がさしながらも




「この前家で一人でしてたら妹に笑われました(笑)」





この笑顔を見る為ならば
手段など、
選ぶものかと
意味の無い決意をしてみたりした。







なのに――









「もう作んないの?」



「えっ?」



「お弁当。
 面白いくらい
   喜んでたけど。」



「後からもう
 ダメ出しの嵐でしたよ?」


「へぇー(笑)
なんかちえさんらしい。」







何故私はこうも
自分を苦しめるのか。







「愛情の裏返し、
  じゃないの(笑)?」



「そ、そんな風じゃ…
 全然無かったです、
      …けど…」



「ダメ出しされたからには
 OKもらえるまで
   作んないとね?
  下級生としては(笑)」






さしずめ私は、



良くてキューピッド







現実は…
   


   …哀しきピエロだ。





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