★星屑★
□Paradox
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二人きりで、君が自然な笑顔を向けてくれたのは
いったいいつ以来だろうか。
遠すぎて
もう思い出せないよ…
このままで
いられたら―――
「最近さあー」
「?」
唐突に話し始めても、君の柔らかい表情に変わりは無く、
内心ホッとしつつ続ける。
「お手紙によく
“テレーゼ様よりエディへの愛の方が強そうですね”とか
“本当はどっちを愛してるんですか”とか書いてあるんだよねー(笑)」
「キャハハハハッ☆
ひどぉーーいっ!」
ほんと、
酷いよね。
まあ舞台上の事は
表現力向上あるのみとして。
『今は…ちえなの?』
訳知り顔で尋ねてくる上級生までいる。
『今は』って…なんだよ
じゃあ『前』は?
『その前』は?
―――――面白い
「フランツルとしては
本当の所、どっちなんですか♪?」
「さあ…どっちだろうね…笑」
「えーーっ!?
…なんかショック…」
躊躇い無く素直な感情を見せてくれたのは嬉しいけれど、
それは疑う余地も無く
役の君だから。
「そーゆーねねちゃんは
――どっち?」
「それはもちろん
フランッ―――」
「―あたしとちえさん」
「―――え?――――」
他人の立てた推論に
振り回されるのは
もうごめんなんだ。
ねぇ、答えてよ。
その口で…
けれど臆病な私は、
答えることなど出来ないように、腕を引き上げ
自らの唇で強引に塞いだ―――――――――
「―――――ッ!」
エディのように叩かれこそしなかったが、
それが決して受け入れられた証では無いことは
その困惑と怯えの混ざった表情を見るまでも無かった。
君は
きつく掴んだままの私の手を振り解き
無言のまま
その場を走り去った。
今は
理解するよう努めるしかなかった。
最後に残されたのが、冷たくなった君の手の感触で、
触れた唇の温もりなどではなかったことが、
導き出された答えの
全てなのだということを。
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