黄昏の行方

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その日、私達は怪談をしていた



『…で、その子達が学校の七不思議を確かめよう…って。

「夜の学校は入っちゃダメだよ…」

そう言ったクラスメートもいたけど、その子達は気にしないで、学校に集まったの…

一つの怪談を確かめて、何も無かったら次の怪談の場所…

校庭を走る二宮金次郎像…

トイレの花子さん…

誰も弾いてないのに音を奏でるピアノ…

一人手に飛び跳ねるバスケットボール…

あの世と繋がる13階段…

本物の臓器が使われた動く人体模型…

夜だったから不気味に感じたけど、いつもと何も変わらなくて…最後に
死に際の自分が映る二重鏡を確かめたの…

映ったのは、永遠と連なる自分の顔で…

「これも迷信か…」

って、呟いたら、返事がなくて…そういえば、鏡には自分しか映ってない事に気付いてね

「皆は見ないの?」

って聞いても、誰も返事がなくて…でも、小さな…本当に小さな声で…

「…来ちゃったんだね」

そう聞こえて、声がした方を見たら、鏡に…

ニコニコと笑ってるクラスメートの子達と…


血まみれの自分の姿が…!

「やだ!」



カチッ



持っていたペンライトをこうやって、話し終えるたびに明かりを消していって
最後に数を数えると一人増えるそうだ

んで、増えた一人は幽霊なんだと…

…全く、嫌になる



「麻衣ってば!変にリアルな話しないでよ!学校来れなくなるじゃん!」

『ハハッ、ごめんね。んじゃ、最後はミチル』



変にリアル…ねぇ
コレ、正兄がしてくれたのを頑張って思い出した怪談話なんだけどさ
別に、怖くはないと思うんだけどな…



「…じゃあ、旧校舎の話をするね」

『あぁ、あの木造半壊オンボロ校舎の?』

「そ。あれね、取り壊そうとしてあそこで工事がストップしちゃったのよ…祟りで」



うん、知ってるよ
その話

だって
・・・・・・
読んだ事あるし

って言っても、もう殆ど覚えてないし
大体のストーリーしか覚えてないんだけどね…
セリフとか、全然覚えてない…



「――夜ね、旧校舎側の道を通ったら、窓から見てたんだって…消すよ」



あ、怪談終わったんだ
後は…



「―いち…」

「にぃ…」

『さぁん』

「し…」



この後は…



「ご」

「やだー―っ!」
「きゃーっ!!」
「出たー―っ出たー――っつ!!」



ガタガタ
ガタン!


念願であるハズの5人目の声にプチパニックに陥った少女ら
一人は朔夜の腰に抱き着き
もう一人は朔夜の腕に抱きつき、反対の腕もまたしかり…



『………………どうしてこうなった…』



ボソリと呟いたソレは、自分を囲う少女達の悲鳴と奇声に掻き消され、誰の耳にも届く事はなかった



パチ



そんな音と共に照明がつき、部屋が明るくなった
それと同時に皆落ち着いた様で、各々の腕の力が緩み楽になる



……物語の、ハジマリだ



クスリ、と
誰にもバレない様に笑う

ゆっくりと視線を“5人目”に向け、一先ず観察する事にする



「いっ…今‘ご’って言ったのあなたですか…?」

「そう…悪かった?」



いや、別に悪くはない
例え何であれ“5人目”が現れなきゃこの怪談は終わらなかったし…



「なーんだぁ!腰が抜けるかと思ったあ」

「それは失礼。明かりがついてないんで誰もいないと思ったんだ。そうしたら声がしたからつい…」

「そんなあ!いいんですぅ。転校生ですかぁ?」

「そんなものかな」

「何年生ですかぁ?」

「…今年で17」

「じゃ、あたし達より1年先輩ですね」



いやいや、年齢を言っただけで学年答えてくれてないじゃん



嬉しそうに笑いながら、彼に話しかける友人達を尻目に、一人心の中でツッコミを入れた



…ってか全身黒づくめって、なんか
某見た目は小学生な探偵さんに登場する組織の人みたいだな…

でも、まぁ…うん
やっぱり美人だなぁ

というか…



『サラサラ黒髪、くせ毛無し…羨ましい』

「「「「………」」」」



ボソリとつぶやいた私の言葉に、沈黙が訪れた…

え…何で?









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