黄昏の行方

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普通の日々

環境は最適


中学校生活も

2年目になった


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授業内容は、それなりに楽しい
新しい事を学べるのは、新鮮だから

球技大会で優勝してから、いろんな子と話すようになった


楽しい

でも

最近、何か、おかしい


視線を感じるのだ
学校内はそうでもないのだが、登校、下校、バイト中…

纏わり付くような、視線

…気持ち悪い




「まーいーちゃーん!」

『…杉田先輩。どうしたんですか?』



学校帰り
校舎から駆けて来た先輩に足を止め、振り返る

今日は珍しく、その視線がない
だから、少し気分がいい


そう、だから…



「あのね、頼みがあるんだけど…いい?」

『…内容によりますが』

「うん。あのね…部活の助っ人、お願いしたいの」



…だから



『……いいですよ』

「本当?ありがとう!!」



だから
滅多にしない助っ人を、了承した


嬉しそうに笑う先輩は、落とし物を拾って貰った事で対面し、それから良く話すようになった人で
数少ない、友人だ



「それじゃ、ユニは貸すから行こうか!」

『はい』



駆け足で前をゆく先輩に続き、走る

バスケ部キャプテンの彼女の足は、速い
けど、着いていくのは容易い



「やっぱ勿体ないわぁ」

『…入りませんよ』

「分かってるって!勧誘はしないよ。部活は個人の自由だからね!」



明るく笑いながら言う先輩に、へにゃりと笑い返す

運動部に勝る記録を打ち出したのは、やはり目立ったようだ


しつこく勧誘してくる人もいたが、この人は違ったし、なによりサッパリとした性格の彼女とは、相性がよかったのだ



『ところで、今日はどうして助っ人が必要なんですか?もしかして…』



普通の練習試合で呼ばれる事はない
前回は他校との試合の助っ人として言われたが、如何せん部員でないので断った

そして、彼女が助っ人を呼ぶ大半の時は…



「打倒男バス!!今日こそ男バスを負かすのよ!」

『…やっぱり』



男子バスケ部との模擬試合、である

彼女曰く
男子バスケ部と互角以上に戦えれば大会でもなんとかなる!
らしい

故に男バスVS女バスという対戦をやるのだ
…多分、他の学校ではやれないと思われる


でも



『じゃあ、今日はフルでいいですよ』

「ほんと!?やった!任せたよ!!」

『はい』



いつもは前半後半20分づつしか出ないが、今日は特別

だって



『今日は、気分がいいので』

「そっか!」



ニコニコと、笑う先輩

体育館まで、あと少し


空は快晴

久しぶりに開放感があって、気分は良かった








試合の結果は3点差で勝利

男子の相手は球技大会のようにはいかず、疲れた

体力には自信があったが、足はガクガクだ


試合終了後、クールダウンを終えて帰路につく


視線は、ない

久しぶりに全力を出して走りまわり、楽しかった


思わず、ニッコリと口元が緩む



至極幸せそうな、細やかな笑み






‐―それは―

―つかの間の一時――

――幸せなトキは―

―もう――

――終わりを告げる―

―なぜなら――


――もう―


―コトは起こっているのだから―‐




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