黄昏の行方

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「あなたも、年長者がそんなじゃ困るわ。一応私が除霊しておきますけど」

「…君の気のせいだと思いますが?」

「これだから霊感のない人は困るのよ」



そう言われた瞬間、彼の目付きが、変わった


…ように見えた



「…君、霊感があるんだった旧校舎について何か感じてないか」



挑戦的な口調…黒田は、つらづらと口を開く



「旧校舎?あぁ、あそこには戦争で死んだ人の霊が集まってるみたいね」

「戦争で?いつの?」

「もちろん第二次大戦よ。きっとあそこには病院があったのね。看護婦らしいのや…包帯を巻いた霊も見たわ」

「…ふぅん。大戦中、ここに病院があったとは知らなかったな。この学校は戦前からあったと聞いたんだが、昔は医学部でも?」

「っ!!そっそんな事知らないわよ!とにかく私は見たの!霊感のない人には分からないわ!」

「校長先生が旧校舎が取り壊せなくて困るとボヤいてたな。君が除霊してあげればいいと思うが?」



どっちもどっちな言葉の応酬に、朔夜は溜息をついた



あー…もう
何なんだよこの人達は…
いい加減にしてくれ…
ほら…クラスの雰囲気見てみ…皆引いてんぞ…?



「あのう…渋谷先輩、今日はやめませんか」

「あ、あたしも…なんか、気が乗らないや」

「…そう、じゃあまたいつか」



恵子達に断られ、教室から出ようとする渋谷氏…



「…なによ!」

「いや…」



振り返りざまに、黒田と目があい、一方的に威嚇される渋谷氏は、気にした様子もなくスルー

それに朔夜は思った
哀れだな




「…あぁ、谷山さんちょっと」

『ん、何?』

「少し時間をくれないか」



それを聞き
え〜!麻衣だけずっるーい!
と騒ぐ恵子達を背に、朔夜は鞄を掴んで逃げるかの様に渋谷氏について教室を出る



教室を出て数メートル
渋谷氏は口を開いた



「彼女はクラスメイトか?」

『んー?…そうらしいね。まぁ、今日初めて喋ったんだけど…ってか今日はじめて見た…』



基本的に、クラスメイトの名前を覚えない朔夜
何気に酷い

更にいえば居る事は知っていたが、眼中に無かったのだ



「…本当に霊能者かな」



ポツリと、渋谷氏が呟いた言葉を聞きとった朔夜



『…違うと思うけど』



同じ様に、ポツリと、呟いた



「…どうしてそう思う?」

『へ?』

「何故、違うと思ったか聞いてる」



どうやら、朔夜の呟きは聞こえたらしく
朔夜は、一瞬顔をしかめた

ただ単に、話すのが面倒臭いからだ



『はぁ、これと言った理由はないよ…ただ…』

「ただ、何だ」

『ただ、ね…うん。そう、そういうこと』

「…どういう意味だ」



勝手に自己完結されても分からない
と渋谷氏
朔夜は面倒臭い…と思いつつ、口を開く



『だって、黒田さんと渋谷さんの会話、かみ合って無かったじゃん?』

「…それだけか?」

『ハァ…ちゃんと言えって事ね…面倒臭いなぁ…
会話については、さ…黒田さんは旧校舎のとこに病院があったって言ったけど、実際は病院はなくて、学校があった。
んで、医学部があったとしても大戦時代に看護婦らしい服なんか着ないでしょ?
基本学生服だろうしね…それに…』

「それに…?」

『ここ、空爆地から大分離れてるんだよ?わざわざそんな所に治療しに来るなんて、有り得ないね』



キッパリと言いきったその言葉に、渋谷氏は目を丸くした









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