黄昏の行方

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「――い!起きなよ、麻衣ってば!」

『ん…むぅ…あと1時間だけ…』

1時間も寝るな!

『むぅ…恵子ぉ?』

「はいはい…はぁ、ほら、目ぇ覚めた?」

『うー…おはよぉ…』



ぐぃーと、腕や背中を伸ばすとポキポキとなり
更に欠伸をすると涙が出てきた



「おはよじゃないよ。もうHRも終わったし…」

『へぇー…Σえぇ!』

「何回起こそうとしても起きないからね、先生も諦めてたよ」

『う…マジか』



あちゃー…それは、悪い事をしたな
さて…私、何時間寝てたんだ?
私の記憶が確かなのは…5限目の数A…の、途中まで…だ、な。うん
そっから寝てたのか

…机に乗った教材も数Aだし、間違いないな



などと考えていると、恵子が何かを思い出した様に手を叩いた



「そういえば、麻衣は今日暇?」

『ん?えーと……うん、暇』



未だ寝ぼけている頭で今日の予定を思い出し、結果何も無かった故に暇と答えた



「あのね、昨日の人…そう、渋谷先輩!昨日の続きで怪談やるんだけど、行こ?」

『んー…どっちでもいいよ』



だって、確か中止になるし…



「あのお姿をもっぺん拝めるとかサイコーよね〜」

「本当に来てくれるかなぁ」

「でもさぁ、昨日おどろいたよねぇ」

「あたし本当に出たかと思っちゃった」



テンション上り気味な彼女らを尻目に、鞄に荷物を詰め込む…



「ね、場所どうする?ここじゃムードないじゃない?」

「また視聴覚室使おうか」

「ちょと」



突然会話に入って来たのは黒髪を三つ編みにし、二つ下げている…



「あ、黒田さんさよなら」

「あなたたち、今してたのなんの話?」



黒田というクラスメイトに、高圧的に、言われた


それに、少し、ムカっとした



『貴女に関係ないでしょ?』

「ちょっ麻衣っ」

「なっ!?」



事実を述べたら、キッと睨まれた…無性にイラついたので逆に睨み返してやる、と
ビクッって肩を跳ね上げた…

はっ小心者め
と、心の中で悪態ついてみた
寝起きだから機嫌悪いんだよね

そんな時


コンコン


と、ドアがノックされ
ドアに一斉に視線が集まる
そこにいたのは…



「谷山さん、いるかな?」



話題となっていた黒服の君…渋谷氏がいた

恵子達が後ろで騒いでいるが、ここは無視だ。無視



「何年生?何の御用ですか?」

「あぁ、彼女達と約束があってね」



黒田は渋谷氏に同じく高圧的に言う



「約束?何の?」

「怪談だけど」



何でもない様に言った彼の言葉に、黒田はくるっと振り返り



「そんな事はやめなさいって言ってるでしょ!どうりで今朝学校に来たら頭が痛くなったはずだわ!!」



叫ぶ様に、宣った


朔夜はどこ吹く風の如くそれを見ている
曰く、どうでもいいからだ



「私、霊感が強いのよね。霊が集まってると頭痛がするのよ。今日も一日頭が痛い…霊が集まってるんだわ」

『ふーん…で?』

「アナタ知らないの?怪談をすると低級霊が集まって来るの、低級霊が集まれば強い霊を呼ぶわ。そうなったら大変なの、だから怪談なんかおもしろがってしちゃダメよ」



よー喋るな、この女
…正直、うっさい



朔夜達に一通り言った後に、今度は渋谷氏に矛先を変え、口を開く









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