黄昏の行方

□1
3ページ/8ページ



次の日、私は“彼等”に会う為に早く起きた

誰もいない通学路をゆっくりと歩き、視線を上にあげる



…桜、綺麗だなぁ



薄紅色の花弁は、風と共に儚く…けれど、美しく散り
その一瞬で、見る者を虜にする…



桜吹雪、かぁ
きっとアッチでも綺麗なんだろうな…



悲しそうな、泣きそうな、笑っている様な、そんな顔になる朔夜
自覚は、していないだろう
その表情はひどく儚かった…








…あ、旧校舎…
入んないと…だよね



仕方ない、と
若干不気味な雰囲気を醸し出す旧校舎へと足を向けた…



ギィ…



『カメラ…だね』



触りはしない
壊したく無いから
でも、近付く



『こんな事しても、無駄なのに…ね』



ボソ
と呟いた言葉は、誰の耳に入る事は無く消えた…



「ー―誰だ!」

『Σうひゃっ!』



突然の声に
ビクッ
と、肩が飛び跳ねる
・・・・・・
知っていても、いきなり大声を上げられると驚くものだ

長身の男性。右目を隠す様に伸ばされた髪は黒く、見える片目の眼光は鋭い
その人はカッカッと足音をたてて近付いて来た

距離が近づき、歩調を緩めた彼と対面する
――――その時だ



ミシミシ―――ガタンッ



『えっ…』

「なっ!」



突然壁が軋み、壁にかけてあった額縁が…朔夜を目掛けて落ちてきた



『ー―ちっ!』



避けれない
そう判断した朔夜は反射的に腰を落とし、ソレを蹴り飛ばそうと構えた…が

白と黒が、眼前を阻んだ



ガッ


鈍い音が、聞こえた
音は、目の前にいる男性から…

まさかと思い、しゃがみ込んだ彼に近寄る



「っつ…」

『っ大丈夫ですか!?』



思った通り、怪我を負っていた


ポタ
ポタポタ…



『あ…血、が…』



額縁の硝子が割れ
その人の肩や額を掠めて出来た傷…だろう

更に、額縁本体が当たったのか腕を押さえている…



『とりあえず止血を…!』

「…リン?」

『あ…昨日、の…』



タイミング悪く、昨日会った彼がやって来た
彼の眉間には皺が寄り、険しい表情になっていた…



「何があったんだ?」

『え…と、壁がいきなり軋んで、それで、額縁が落ちてきて…その…私を庇ってこの人が…怪我を…』



多分、庇ったんだろう…
怪我をせずに対処する自信はあったが、“ただの女子高生”がそんな事出来ると思わないだろうし…



説明しながら鞄からハンドタオルを取り出しす…とりあえずは出血が目立つ額だ



「…分かった。この辺に病院は?」

『ん…と、校門を出てすぐのとこにあります』

「手を貸してくれ」

『あ、はい…』



傷口―額に手を伸ばした瞬間
パシッ
と、弾かれた



『え…』

「結構です。一人で立てますから…」



そう言って、立ち上る彼は、腕を押さえていて

額から伝った血が、Yシャツに赤いシミを…




『〜〜〜っ!怪我人が何言ってるんですかっ!』

「な、何を…」

『とりあえず一回しゃがみなさいっ!!』



怒鳴り声に近いその声にたじろいだ男性は、朔夜の剣幕に押され座るのだった…









次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ