黄昏の行方

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「ぷっ…もう、麻衣ったらまたそれぇ?」

『…いや、私にとっては重要事項だから』



だって、ね?
大好きな唯一の存在と同じだった黒髪は、私には無いんだから…



その何とも言えない空気を破ったのは、ピピピピと、鳴り響いたアラーム音だった

音がする場所は、朔夜の元から…

慌ててスカートポケットに手を入れ、未だ音を奏でるモノ…少し古い電子時計を取り出しアラームを止め、時間を確認する…


――――――18:48



『やば、ごめん!私帰らなきゃ…!』

「え?あ、うん」

「あ、麻衣っ!」

『また明日ね!』



バイバイ
と、慌てて出て行く朔夜を見送った後

その場に小さな沈黙が訪れたが、明日の放課後に会う約束をした後、解散となった…




――――――――――‐‐
―――――――‐‐

ダダダダダ…



『―ハァッ―ハァ』



全力で、走る
何故なら、7時に家に帰らなければならないからだ

徒歩では15分かかるが、走れば半分以下の時間で済むのだが、視聴覚室から学校を出るまでに存外時間がかかってしまい、慌てる



『後、すこし――はっ』



ラストスパート
と、更にスピードを上げて家…もとい、ちょっとボロいアパートに駆ける

急いで鍵を空けて部屋に入る…と



RRRRRRRR……・・



『Σきた!』



タイミングを見計らったかの様に電話が鳴り響き、慌てて受話器をとる



『っはい!もしもし?』

「…麻衣、ですの?」



声の主は予想通り…というより、約束通りかけてくれた親友だった



『うん。そ、だよ』

「声が枯れている様ですけど…大丈夫ですの?」

『あはは、そりゃ走って帰って来たからね』

「…なにかありましたの?」

『うんにゃ、ちょっとね…真砂子からの電話に出れなくなったら嫌だから全力で走ったよ』

「まぁ、嬉しですわ」

『うん!私、真砂子大好きだもん!』



今、私が話しているのは原 真砂子という有名な霊媒師
・・・
ある事をきっかけに出会い、まぁ、色々あって…今に至る

私にとって真砂子は親友であり、大切な理解者
私が唯一心を許した相手なのだ



何気ない会話を何十分もし、互いに笑う


今日は、週に一度真砂子が電話をしてくる日で
普段忙しい彼女が私の為に時間をさいて作ってくれたこの時を、危うく踏み躙るところだったとは、言わないでおく

…まぁ、後でバレるかもだけど、真砂子は許してくれると信じてる…!



『でね、今日は待ってたお客さんが来たんだ』

「どんな方でしたの?」

『みた通りの人だったかな。ただ凄く胡散臭かったけど…でも、多分、真砂子も気に入ると思うよ』

「まぁ。でも、も、という事は麻衣は気に入ったのね、その方の事」

『ふへ?あー…うーん…何て言うか、さ。私は“前から気になってた”から…かなぁ…?』

「…麻衣にしては珍しく曖昧ですのね」

『うん。あ、ごめん真砂子。私、そろそろ晩ご飯にしないと…』

「あら、もうそんなに時間が経ってしまったのね…」

『だね、じゃ真砂子。またね』

「ええ」



ガチャ



楽しい時間も終わり
仕方なしに晩ご飯の準備をする…
と言っても
時は既に9時を差し、お腹の限界もあり、はやく食べたかった朔夜はインスタントラーメンで済ませた









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