黄昏の行方

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教師達の中で、谷山麻衣は問題児として有名だ


授業態度は、最悪
寝る、ノートには落書き、話を聞かない

成績は、優秀
テストは満点、解くスピードは早く正確、説明せずとも理解する所謂天才・秀才

協調性は、皆無
放課の時間はいつも一人、他の生徒と一緒にいる所を見た事はない


小学生にしては落ち着いていて、何処か近寄り難い雰囲気を持つ彼女と仲良くなろうとする同級生はおらず

班行動の時ですら、一人であろうとし

いつも一人でいた


麻衣は…朔夜は、自分で望み、一人でいたのだが
それは当人でしか知り得ない事であり、他者から見て朔夜が一人でいるのは異様だった


何故一人なのか
理由は、何か…?


担任であり、新米な教師は悩んだ

初めて受け持ったクラスなのだ。出来る限りの事はしたい

彼はそう考えた

前途多難な険しい道である


彼は努力した

なんとか彼女をクラスの輪の中に入れようと

会う度に
根気強く彼女に話しかけ、クラスに馴染ませようと…

見る度に
彼女を観察し、クラスメイトと一緒に行動させようと、何か手はないかと考えて…


毎日

毎日、毎日…


気付けば、彼は彼女の事を考えるようになっていた

気付けば、彼は彼女の変化が分かるようになっていた


今日は機嫌が良い

今日は少し体調が悪いみたいだ

今日は不機嫌だ

今日は、今日は、今日は…


彼の目は、自然と彼女を追っていた


彼女はそれに気付いたが、得に気にせずともいいだろうと考えていた
別に平気だろう、と


しかし、それは…
…間違いだった


ある日の事だ

その日は、授業参観日


彼は、彼女の親を探した
教室の後ろに並ぶ生徒の親達の中…
彼はすぐに見つけた


あぁ、なんて彼女に似ているんだろう…!


それは彼女の母親だった

明るい茶色の髪
色白な肌
くりっとした目
すっと通った鼻筋

見れば見るほど、似ていた

ふと彼女を見れば、今まで見た事のない表情をしていた

何処か恥ずかし気な、はにかんだ笑み…

あぁ
なんて可愛い顔をするのだろうか



もっと、もっと、見てみたい

彼女の色んな顔を、表情を…

俺だけのモノに…!








それは、悲劇をもたらす根源

発端は、小さな保護欲

人間の、醜く歪んだココロ

それは―


――彼女を捕らえる











11/04/18
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