黄昏の行方

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普通の家だった

普通の、親だった

普通の、一般的な、本当に、普通の家庭だった


でも



私が違っていた…





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私が生まれて、4年

私は一人で歩けるし、走れる様になった
行きたい所には自由に行けるし、伝えたい事はちゃんと言える様になった

はじめの1年は、本当に嫌だった。喋れないし、動けないし…それに……
うん
思い出したくない



麻衣ー!出かけるわよー?

『……わかったぁ、ちょっとまってー!』


・・・・
お母さんに名前を呼ばれたけど、その名前にまだ慣れてなくて、少し間があいちゃった…
まぁ、仕方ないよね

だって、私の名前は谷山麻衣じゃないから


私の本当の名前は…墨村朔夜だけだもん



とりあえず
てきとーに着替えて、ハンカチや救急セットとかをリュックに入れる

うん、完璧


リュックを背負い、帽子を被る…そして、少し急いで玄関で待っているだろう"お母さん"の元に行く



『じゅんびできたよ』

「ふふっ、ほんと麻衣は偉いわね。じゃあ行きましょ?」

『うん』



笑いながら、優しく頭を撫でてくれる"お母さん"は…嫌いじゃない

だって、前の"母さん"は、こんな事してくれた事ないから……覚えてないだけかもしれないけど、"母さん"より"父さん"と一緒にいたし、好きだった…だから
・・・・
こっちの"お母さん"は、好きだ


だから、ちゃんとした"子供"をやってる

…普通にしてたら、絶対に気持ち悪いだろうし

それに…もしソレが理由で捨てられたりしたら、面倒だし

多分、生きていけない



『きょうはなにをかうの?』

「えーと、お肉と人参とじゃがいもと玉葱と…あと、お豆腐ね」



そんなこんなで子供っぽく
歩きながら、そんな会話をして…考える

お肉、人参、じゃがいも、玉葱…これらを使う食べ物と言えば…



『カレー?』

「残念でした。今日は肉じゃがよ」

『む…』



どうやら違ったらしい

…そういえば糸蒟蒻が冷蔵庫にあったような……
ちっ…ハズした



そうやって、"お母さん"と手を繋ぎながら歩いて…

…足が止まった



「…麻衣、どうかしたの?」



急に立ち止まった私を心配したらしく、"お母さん"が私を見る…



『へーき、なんでもないよ』



ニコッ
と、出来るだけの笑顔を作って、繋いだ手を引っ張る


見つけたアレから、逃げる為に…バレない様に、早く
逃げないと


人じゃない、アレから


生まれ変わっても、アレが見えるのは変わらないらしく
その分、色々と苦労した

前使えた結界は、今はまだコントロール出来なくて作れないし…
式も、頑張って作ったけど、ただの紙で使えない…

今の私は、何も出来ないから…



『はやくいこ!』



アレと関わらない様にしないと、危ない…


"大丈夫"なモノも居るけど…
アレは、"大丈夫"じゃないから…

今日は、逃げる

まだ…逃げる

でも、いつか…


いつか、絶対に…


滅してやる…!









10/08/09
 

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