暁月夜の間

□第七話
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「副長ー!」

「ぁあ?なんだ、山崎」

「副長宛てにお手紙です」

「手紙?誰からー……!?」

「副長?」

「…山崎、俺の有給取ってこい」

「はい?また急ですね」

「後は頼んだ」

「あ…もう行っちゃったよ。珍しいな、副長があんなに急いでるの」



























「すいませーん」

「んあ?なんだ」

「これ、直りますか」

「んー…こりゃ、中の回線が切れてんのかもしんねェな」

「どうですか?」

「ちょっと待ってろ」


私は今江戸にいる。おばさんからお遣いを頼まれたのだ。この前買ったばかりのテレビに付属していたリモコンが壊れてしまったらしく、町に行っても修理屋が最近の機械は手につかないそうで、直すためにはるばる江戸にやってきた。


「お前さん、この辺りじゃ見かけねー顔だな」

「田舎から出てきたので…お遣いを頼まれたんです」

「そうか。わざわざ江戸になァ…この辺りは物騒だから気をつけな。まあアンタのその獲物がありゃ大丈夫か」

「お心遣いありがとうございます」

「見たところ攘夷浪士じゃなさそうだが、気をつけるこった。ほらよ、直ったぜ」


頭に大きなゴーグルをつけたお爺さんはすぐにリモコンを直してくれた。


「すごい…」

「こんなもんすぐに直せる。やけに珍しそうだな」

「いや、あの…私、ここに来てから周りのものが全て新鮮に見えて…」

「そうかそうか。江戸は賑やかだからな。無理もなかろうて」

「生まれてこの方、刀しか振って来なかったものですから…あ、お代を」


私はお金を渡して、お礼を言いながらからくり堂を後にした。


「あの嬢ちゃんの獲物、奴と同じ木刀だったなァ…」


お爺さんがそんなことを呟いていたことは私は知らなかった。









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