歪みの国のアリス
□今日も今日とてお茶会だ
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「俺はケーキのことを言ってんの。焼けたばっかりだったのに、あんなふうになったら芋虫しか食べないだろ」
「ワシは煙管しか吸わんぞ。それに、端っからお茶会には参加しとらんよ」
芋虫が、心外だと言わんばかりにすぐさま言い返す。
「せっかくの焼きたてだったのに…」
帽子屋は芋虫の言葉を無視するように、ぶつぶつと文句を垂れている。
「まだ…アリスは来ない」
たとえ時計が進まないとはいえ、砂場に転がるそれはアリスが来る頃には"焼きたてじゃない、できたてのケーキ"になってしまっていたことだろう。
ならば、アリスに焼きたてのケーキを食べさせるのは、どのみち無理な話だ。
なので、今焼きたてだからと文句を垂れている彼に、僕はもう一度アリスはまだ来ないことを言った。
「あぁ!そうだよ、ここには俺たちしか居ないし、まだアリスが来るわけじゃ無い。ってかネムリンは、アリスが来る来ないより先に、何か言うことがあると思う」
と言いながら、彼は手からフォークを抜き、僕の目の前に見せつけるようにそれを差し出す。