歪みの国のアリス

□猫の気まぐれ
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まだまだ春も浅く、雪こそ降らないがとても寒い日のことだった。

「チェシャ猫〜どこにいるの」

アリスが僕を呼ぶ声が聞こえた。
僕はちょうどコタツの中でごろごろしているところだった。あったかくとても心地よかったし、さらには眠かったので、出て行かないことにした。
チェシャ猫ってばどこにいるのかしら、と少し遠くでまた声がした。
僕自身はぬくぬくとしながらアリスが僕の名前を呼んでいるだなんて、なかなか気分がよいものだ。もうしばらくこうしていよう。

「チェシャ猫〜」

アリスの足音と声が移動していく。

「なんだい、アリス」

コタツの中からでは君に聞こえないとわかっていて、小さく返事をした。
ついでに欠伸もひとつして、またごろごろする。

「もう、チェシャ猫ったら」

今度は近くで声がした。
アリスが僕に気付いたのだろうか。

「いっつも本当に居て欲しい時に現れてくれないんだから」

そうアリスが独り言を言って、彼女の足がずるりとコタツに入ってきた。
どうやら僕はまだ見つかって無いようで、アリスは僕を探すのを諦めたようだ。

「アリスの言葉は天の言葉とか、いつでもそばにいるとか言っても、実際なかなかそうはいかないわよね」

あぁ寒いと言い、アリスは足を動かして、僕は危うく蹴られそうになった。

「寒い日にチェシャ猫と一緒に寝ると暖かいのにな」

つまりアリスは僕を抱えて寝たいらしい。
あれをされると確かにアリスは暖かいだろうが、僕は窒息してしまいそうになる。死ぬのは勘弁してほしいので、しばらくコタツから出ない方が身のためだと、眠る体勢に入った。

「チェシャ猫、出てきてよ」

しかし寝ようと思ったのもつかの間、アリスが僕にとうとう決定的な言葉をつぶやいた。そのつぶやきはもちろん僕の耳に届いた。
彼女の言葉に逆らうことの出来ない僕は、出てきて欲しいと言うアリスの言葉にもちろん逆らえるはずが無く、

「僕らのアリス、君が望むなら」

とコタツの中から転がり出る覚悟を決めた。







fin.



千葉様リクエストのチェシャ猫←←アリスのほのぼの文です。


根底にアリスのことを好きなチェシャ猫があっての、チェシャ猫←←アリスを心掛けてみました。

私は歪アリの文で、ほのぼのは書いたことがなかった(考えたのも実は初めてだった)ので、どうしたらほのぼのになるだろうと考えました。
きっと歪みの国ではてんやわんやで落ち着く暇が無さそうだと思い、猫を連れてのエンド後をイメージしてみました。

アリスとチェシャ猫の主従関係は、普通のペットの猫と人間の関係とさして変わらないと聞いたような気がしたので、こんな感じの時もあるだろうと思い書いてみました。

うまく書けたかわかりませんが、こんなのでよろしければもらっていただけたら嬉しいですo(^-^)

リクエストありがとうございました♪

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