歪みの国のアリス

□病室、キミは選択を誤った
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病室の窓から、私はいつもと変わらない街並みと空を見ている。


実際のところは、この病室から街並みを見たことは無かったので、私にはいつもどうりには見えなかったし、いつも同じ空など見ることは出来ないのだろうけれど。


ドアの開く音が聞こえ、私は部屋の入口であり、出口でもあるところに振り返る。

「雪乃」

そこには私の親友が立っていた。

「お見舞いに来てくれたんだ、嬉しい」

と私は笑おうとしたが、顔の筋肉が強張ってしまっていたため、少し口を開いて目を細めるだけの顔を彼女に向ける。
私には彼女の正体が分かっているのだ。

雪よりも白い肌の少女は、ドアの前で立ち尽くしている。
その手は体の後ろに、プレゼント用の包装の施された箱を隠すように持っていかれているのが私から見えている。
彼女は私よりも上手に"笑顔"をその顔に湛えているが、私の目には無表情も同じのように映る。
雪乃が今は私にとって、私の命を脅かす存在であるからだ。
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