歪みの国のアリス

□私を導いて、あなた
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「チェシャ猫、あなたが居てくれれば他に何もいらないわ」

僕が望んでいた言葉をこんなにも簡単にアリスの口から聞けるだなんて、きっと僕はいい死に方をしないのだろう。

アリス、僕は君が欲しくて
君が僕以外のヒトやモノやドウブツを見て欲しくなくて、僕は君が作り出した歪みの国の住人たちを殺したのだと自分で思っていたけれど、
君のその言葉を聞くためだけだったのかもしれない、って今思ったよ。

僕はとても単純な造りをしているんだろうね。

もちろんそんなことは口に出したりはしない。
何故なら君は、僕が彼らを殺したんじゃ無いって信じているからだ。

僕はただ、

「そうかい、僕もだよ。アリス」

と君に返事をして、口元にいつもの笑みを浮かべるだけだ。

アリスは

「本当なの。あなた以外いらないわ」

と、繰り返した。

その時僕は、アリスが僕以外のものを望んでいることに気が付いた。

アリスは望んでいるそれを否定してしまいたくて、自分自身に嘘をついているのを否定してしまいたくて、僕にわざわざ繰り返して言ったのだろう。
嘘が嘘で無くなるように、彼女は自らに『チェシャ猫以外いらない』と擦り込ませるように口に出したんだ。
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