歪みの国のアリス

□僕の中で見た青
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アリスは見ていた。
青い、あおい世界で、
青い海を、
青い空を、
青い腕を、
青い血を、
青い影を、

彼女は見ていた。

それだけでアリスは幸せだった。

気分のいいアリスは、彼女の他にそこには誰もいないはずなのに、語りかけるように話しはじめる。

「きれいだわ、ほら。夕日があんなにあおいなんて、直接太陽を見ても目が痛くならないくらい…ねぇ」

彼女には青以外の色が見えていない、というわけでは無いようだ。
ただ、すべてのものが青く、ただあおく見えているかのように話すのだった。

「青いあおい青い。青って、素敵」

アリスはまた一人、話をはじめる。

「あお、青、あお、青…」

彼女はその言葉だけを繰り返しながら、くるくると踊る。
ふわふわとした足取りは、まるで水面を歩くようだ。

しばらくのうち、アリスはうっとりとした表情で自らの世界に浸っているようだった。
しかし、ふと疑問に思ったことがあったのか踊るのを止め、彼女は首を傾げる。

「青じゃない色って、何があったかしら」
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