歪みの国のアリス

□僕の中で見た青
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不意に、誰かに話しかけられた。

「アリス、こっちを見るんだ」

声の主は、はいいろ。

けれども、アリスにははいいろの猫がどこから声をかけてくるのかわからなかった。

「こっちだよ、アリス」

はいいろの声は、トンネルや洞窟内に居る時のようにこだましている。

「アリス、土管が見えるだろう。中を覗いてごらん。さぁ」

と、アリスははじめて自分が公園に居るのだと気が付いた。
そして、確かに土管が2つ並んでいる。

アリスは迷わず青い土管を覗き込む。

「違うよ。それは、本当の道じゃない」

はいいろの声が諭すように言う。
なら、もうひとつの…
と、ここでアリスは躊躇してしまった。

もうひとつの土管は赤かったからだ。

「アリス、覗いてごらん。さぁ」

はいいろが促す。

「いや、怖い。赤はよくない色だわ」

アリスは青い土管の前から動こうとしない。

「アリス、覗くんだ。さぁ」

猫の声は強要する。
その時アリスは、こころのどこかで、何かが引っかかる気がした。
前にもこんな感覚があった、はず。

アリスはまだ少し戸惑うような素振りを見せていた。
が、しかし猫がもう一度、覗くようにと言うので、赤い土管の前まで歩いた。
そして、恐る恐るといった様子でしゃがみ込み、土管の中を覗いた。

「あ…」

「アリス」
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