いつの間にか俺は弟を抱くようになっていた。綺麗で、狂った、世界で一番憎いほど愛しい弟を。
(悔恨するチョコレートミント)
ガキの頃、俺は病弱な妹を守ることが自分の役目だと思っていた。あいつを守れるのは俺しかいないから、だから出来る限りあいつの傍にいて……。もう一人の守るべき存在を蔑ろにして。
そして思い知らされた。
自分がいかに傲慢で無力だったかを。
「兄さんがくれたドロップはいつもミント味だった」
ジンの言葉が胸に刺さる。
「ミントはあまり好きじゃなかったんだよね」
知っていた。
だけど他の味は俺とあいつで食べてしまっていて、ジンにはそれしか与えられなくて。
でも、それでも。
「嬉しかった」
あの頃と同じでジンは綺麗に微笑んだ。
幼いジンはいつもひんやりとした手を懸命に伸ばして欲しいものを求めて、でも我慢して。手はいつも宙を掴んでおろされた。
知っていた。
妹に色とりどりのドロップを与え、両手を与え、笑顔を与え。
その横で笑いながら拳を固く握りしめる弟を。
「ジン、」
謝罪なんて意味がない。贖罪すらもタイムオーバー。
俺に貫かれたまま、狂ったように笑って俺の涙を舐める弟が、俺の『罪』で。俺に許されたのはただの、悔恨。
(だから今日も俺は全てを与えるためにジンを抱く)
(憎しみというには甘くて、愛というには辛い。悔恨のチョコレートミントを)
「……愛してる」
「嘘つき」