いつの間にか僕は溶けない氷の中にいて、ただ一つのことを除いて世界の全ては僕にとってはどうでもいいことだった。

『良い子だ、ジン……』

嗄れた声が耳障りだったがどうでもいい。

『キサラギを継ぐのに相応しい強さだ』

乾いた舌が痛かったがどうでもいい。

『それに美しい……』

生暖かい息が気持ち悪かったがどうでもいい。

養父という男が、義兄という男が、家庭教師という男が、僕の体を使って何をしようがどうでもいい。
素肌を弄られ、全身を舐められ、女のように貫かれ、いやらしい道具や薬で辱められてもどうでもいい。
僕はただ言われた通りに強くなり、ただ言われた通りに足を開き、言われた通りに生きてみる。
それが退屈で、下らないけれど一番楽だった。
そして汚い世界とつまらない現実に目眩がする日々が続く。
それでも僕は傷つかない。
何故なら僕はずっと溶けない氷の中。世界と隔絶された場所で僕は甘い夢を見る。



(溶けない氷菓子)


(兄さん、兄さん、兄さん……会いたい、)







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