※ゴールデンティータイムの続きっぽいです。
※ハザマがジンの側近っぽくてカグツチにも一緒に来ちゃったよ、な感じで。
※そして今日は、お義兄ちゃんvみたいなノリ。







久々に会った弟は。
あの日と同じように、笑って……俺に切りかかってきた。


「あはは、楽しい。楽しいねぇ、兄さん!」
「ジン……」

俺も満身創痍だがジンもそれは同じで。
出血も目立つが俺のソウルイーターの影響で見た目以上にダメージを喰らっていて、恐らく息をする度に体が軋むのだろう。 笑い声に混じってヒューヒューと息の漏れる音が聞こえる。

「……これで、終わりだ」

憎い。憎くて堪らない。でも、世界で一人の、大切な弟の苦しむ様をこれ以上見ていられない。
いくら力を手に入れても傲慢で甘い性格は変わらない。
自嘲気味に笑って構えれば、ユキアネサと呼んでいたアークエネミーを手放したジンは狂った笑顔じゃなくて純粋に俺を慕って無邪気に微笑んでいた。
ああ、そうか。
本当のお前はただ、俺に遊んで欲しかっただけで。それを、色んな何かに歪められてこうなっちまったのか。
そして何よりもお前を歪めたのは俺だったんだよな。

「兄さん……楽しかったよ」

ゴメンな。
あっち側で先に待っててくれよ。
今度は、今度こそは……お前のこと、放っておかないから。

「ブラ「させませんよ」

ブラック・オンスロートが発動する直前。
不意に響いた声と共にジンの姿が目の前から三匹の蛇に包まれて消えた。

「ジンっ!」
「あまり気安く人のものの名前を呼ばないでいただけますか?」
「てめぇは……」

声のした方に視線を向ける。俺達が戦っていた場所を見下ろすように立つ女神像の上に、男がジンを横抱きにして立っていた。
俺はその男を、その声を知っている。
奴が俺の全てを壊した。
家を焼き、妹を、弟を連れ去った!

「あれぇ、俺のこと覚えててくれたの?『ラグナちゃん』」
「ジンを返しやがれっ!」

急に男の口調が変わり、あの日受けた痛みが蘇ってくる。
男がかぶっていた帽子を取れば髪が逆立ち、糸のように細かった目が開かれ金色の眼が露わになる。ニタァッと三日月型につり上がった口は、そうだ、あの日のジンの笑顔。

「誰が返すかよ、ばぁーか。コレは俺の可愛い狗で未来の伴侶なわけ。わかる?わかんないよなぁ、ただ繰り返すことしかできない馬鹿なケダモノだもんなぁ」

俺を見下し、声高らかに嘲笑う男は大事そうに気を失ったジンに頬摺りすると帽子を再びかぶる。それがスイッチのように慇懃無礼な紳士然とした物腰で恭しく頭を下げた。

「そうそう、申し遅れました。私、統制機構でイカルガの英雄ことジン=キサラギ少佐の側近を務めておりますハザマ、と申します。まぁ、仮名なんですが。真名はクソ吸血鬼…じゃない、アナタもよくご存知のアルカード嬢にでも聞いて下さいな」

一方的に喋り終えるや否や、ハザマと名乗った男はくるりと俺に背を向けた。

「待ちやがれっ!」

しかしそんな声に答えるはずもなく、ハザマと、ハザマに抱かれたジンは光に包まれ姿を消した。

「ジン……!」

異形と化した拳を柱に叩きつける。
また、また俺は救えなかったのか……!

「相変わらず愚鈍で無様ね」

背後からウサギの冷ややかな声が聞こえた。反論するどころか悪態をつく余地もねぇ。

「……それでアナタは諦めるのかしら。えいゆうさんを」
「馬鹿言え」

ヒビ入った柱から拳を離し、握り締め直す。

「英雄なんか知らねぇ。けど俺は……俺の弟をあんないけすかねぇクソ野郎に好きにされてたまるかっ……!」

俺の忌々しげな呟きに、ウサギが小さく、しかし満足げに笑った。





(ウサギ、キドニーパイは好きか?)
(食べるのは遠慮したいけど、作られる様は見てみたいわね)








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