※完全なパロディです。カグツチ町という現代日本チックな場所で洋食屋してる兄さんと、店を手伝いながら高校生してる弟の話です。





一年の計は元旦にあり、とは言ったもので。
確かに新しい年の初めの日は昨日までとは何となく違っていて気持ちが清々しく、一年の目標を立てるには最適の日だといえる。
そしてそれはここ、カグツチ町に住む或兄弟にとっても例外ではなかった。



「で、これは何だ?」
「今年の目標だけど」


カグツチ町で人々に愛されている洋食屋『蒼(ブルー)』。先代の跡を若くして継ぎ、今店を切り盛りしているラグナは新年早々頭を抱えていた。
頭痛の原因は今ラグナの目の前で嬉々として書き初めをしている実弟、ジン。
ラグナにとってやたらと綺麗な顔をした無駄に優秀なこの弟は最早普通の弟という存在ではなかった。
そんなジンは年始の挨拶を交わすとすぐに書き初めを始めた。
今時の学生としては殊勝すぎる行為だが、ジンのある意味ごく普通の年始の過ごし方にラグナは感動した。
『あのジンとこんな普通に正月を迎えるなんて……!ガキの頃以来だ』
……なんて、涙ぐむほどに。
しかし達筆なジンが書いた書き初めを見てラグナの涙は一気に引いた。



『兄さん』



「いや、目標が俺ってどういう意味だよ」
「いろんな意味だよ。兄さんみたいに強くなりたいとか、今年こそ兄さんと一線を越えるとか、兄さんの初めてを貰うとか」
「最初の一つはいいとして残り2つは却下。書き直せ」
「えー……」
「えー、じゃない!」
「……チーズパイを焼いてくれたら書き直してもいいよ」
「チッ……!わぁったよ、作りゃいいんだろ、作りゃあ」
「やった。兄さん、好きー、愛してるー」
「あー、ハイハイありがとよ」
「どう致しまして。でも僕、気持ちは言葉より行為で返して欲しい派なんだけど」

天使のような笑みを浮かべて悪魔の羽と尻尾を覗かせるジンにラグナはため息をついてから額を指で弾く。存外に強い威力を持った一撃に額を押さえたジンは頬を膨らませつつもまんざらではなさそうで。

一年の計は元旦にあり。
『蒼』の看板兄弟は今年もまた、こうして賑やかな一年を過ごすのだろう。



(元旦はおせち料理より大好きな兄さんが焼いたチーズパイが食べたいんです)



(兄さん、兄さん、姫始めしよ?)
(……そういう悪い知恵はどこでつけてくるんだ)
(ハザマ先生とか?)
(よし、あとで俺が新年の挨拶してきてやる)







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