□勝ち目ないかも
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グリーンさんはお人好しだ。
だから、人に何かを頼まれても断らない。いや、断れないに等しいのかもしれない。
普段の性格からは考えられないが…まあ実際のところ、彼は相当なお人好しなのだ。


そんな彼に、俺は惚れてしまったのだけれど。



今回は蜂の巣の駆除、らしい。



「グリーンさん…もう帰りましょうよー…」

「ムリ」

「……」


俺たちは今蜂の巣を見つけて、なんか宇宙服みたいなのを身に付けている。
ああ、グリーンさんはこんな格好してても可愛いんだな。

木の上の方にターゲットはあるようだ。
俺たちの身長じゃ、とてもじゃないが届かない位置にある。



そしてなぜか一緒に同行してきているレッドさん。


とりあえず木に梯をたて、俺がそれを支えてグリーンさんが蜂の巣をとり、レッドさんがそれを袋に詰め込むという作業をすることになった。


「ち、ちゃんと支えてろよ」

「任せてください」



グリーンさんでもさすがに怖いんだな…

レッドさんはつまらなさそうにして、袋を片手にグリーンさんの様子を伺っている。


グリーンさんが人差し指の先でツン、と一回巣をつつくと、一気に蜂達がブーンと大きな羽音をたてて中から出てきた。


「うわっ」

「大丈夫ですか?!グリーンさんっ」


グリーンさんはあたふたと両手をばたつかせている。
なんだあれ、可愛い。


そうこうしているうちに、蜂達は俺とレッドさん目掛けて猛スピードで飛んできた。

やばい、これ超怒ってんじゃねーの…?


「どわっ、はは蜂っ…蜂がっ!」

「これ着てんだから大丈夫でしょ」



群がる蜂にも同様せず、レッドさんはのんきにグリーンさんを見上げたまま俺に向かって呟く。

レッドさん…なんて冷静な人だ…



「ちょっ揺らすなよ!」

「あっす、すみませんっ」


無意識にも俺は梯を揺らしてしまっていたらしい。
だだだって、これは仕方なくないですか…?!



蜂達の勢いが収まってきた頃、だいぶ慣れたのかグリーンさんは巣を引きちぎる作業に移っていた。

ちょっと背伸びしてて可愛いなあ。
あれ、俺今日可愛いって言いすぎじゃね?
まあでも事実だしいっか。

「っ取れた…おわっ!」


ちぎれた勢いでグリーンさんが重心を崩してよろめいた。
あ、これ俺の出番じゃね?


俺はグリーンさんを受け止めようと梯から手を離した。
瞬間、レッドさんが思い切り地面を蹴りジャンプしたかと思えば、そのままグリーンさんを受け止めスタっときれいに着地。
膝と背を両手で支えている。いわゆるお姫様抱っこというやつだ。

今までに見たことのないような、そんなレッドさんの動作に俺は動けずにいた。


「…大丈夫?」

「あ、あぁ…」


悪い、と謝るグリーンさんにレッドさんは「別に」と返す。

そんな二人を見て、俺はその場に立ち尽くしたまま。言葉も出ない。


「あ、はいこれ。巣」

「ん」


グリーンさんははっとし、レッドさんの腕の中から地面にすとんと降りて両手で持っていた蜂の巣をレッドさんに渡す。
レッドさんはそれを持っていた袋に入れた。


どうやら、長かった戦いは終わったようだ。



「んじゃ、ジムに帰るか」


茶でも出してやるよとグリーンさんが言えば、レッドさんはすかさず「僕はココアがいい」と反論。

なんて人だ、グリーンさんの親切を…

それでもグリーンさんは、はいはいとレッドさんのわがままを聞き入れる。
ああ、なんて優しい人なんだ。



やっぱり色々とレッドさんには敵わないなあ。
まあ、グリーンさんだけは渡しませんけど。

見ててください。
今にグリーンさんをメロメロにして、あなたの前でイチャイチャしてやりますよ。






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