□僕の初恋
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僕達はそれほど仲が良かったわけでも悪かったわけでもない。
マサラで唯一の同い年で、図鑑を完成させるという同じ任務を任され、同じ日に旅に出た。ただそれだけ。

それからはライバルとして互いに比べあったり、会う度にバトルをしたりした。…まぁ向こうが一方的に申し込んでくるだけなのだけれど。

バトルが終わった後は、ぼろぼろになってしまった手持ちのポケモン達の傷を癒すために僕はピカチュウ、グリーンはイーブイを抱いて一緒にポケモンセンターへ向かったりもしていた。

回復を待っている間、バッジは何個集まったか、とか、図鑑はどうだ、とか。そんな話しかしていなかった気がする。グリーンはどうだか知らないけど、僕はその時間がとても好きだった。

生意気で落ちつきがなくてバカでどうしようもないやつだったけれど、やっぱりライバルっていいなあって思えたし、何よりグリーンがライバルで良かったと思う。なんとなくだけど。

でも、それからグリーンがライバルで良かったと思う理由が"なんとなく"からちゃんとした理由になりはじめていたんだ。



バッジをもらうため、ジムに入るといつも目に入るのはジムリーダーの認定トレーナーを記された石像。それにはいつもグリーンの名が刻んであった。
それを見るたびに、なぜか心臓の脈が早まって、それからちょっとだけ嬉しい気分になった。


そして、ロケット団を壊滅させるためシルフカンパニーに乗り込んだ僕の目にグリーンが映った時、僕の彼への気持ちが明らかなものになった。
グリーンが僕に話しかけてきているけどほとんど耳に入らない。心臓がどくどくとうるさいし、顔が少し熱い気がする。


やっぱり。
僕はグリーンのことが好きみたいだ。


それから成り行きでバトルして、終わった後に少し会話をしてから彼はまたどこかへ行ってしまった。

それから僕は深く考えてみる。

これが人を好きになる気持ちなんだ。なんかお腹の中がもやもやする。あれ、でも僕もグリーンも男の子だ。うーん、もしかすると子供のうちは同性を好きになるのかもしれない。むしろそれが普通なのかも。うん、そうだ。僕はおかしくない。

そんなことを考えて、一旦回復しに行ってからロケット団のボスのところへと向かう。


この人がロケット団という組織を作ってくれたから、僕はグリーンへの気持ちを知ることができたんだ。感謝しなくちゃ。ありがとうございます。

こんな考えはおかしいのかもしれないが、とりあえず心の中で礼を言い目の前の男の話を聞き流す。
そして男が口を閉ざしてバトルが始まろうとした時、僕は口を開いた。



「ちょっと追いかけたい人がいるから、早めに終わらせるよ」





(だから、待っててね。グリーン)




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