文
□最終手段
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「ねえグリーン、ごめんって」
「………」
「グリーン」
「………」
「ねえってば」
僕は今、怒って口をきいてくれない恋人に仲直りをしようと何度も謝っているところだ。
怒らせた理由?さあ。なんだったかな。もうそんなの覚えてない。
「とっとと出ていけ」
そう言ってグリーンは僕をジムの外に追い出し、扉を閉める際には「大嫌い」とまで口にした。
彼がここまで本気で怒るのは珍しい。いつもなら、僕が一言「ごめんね、好きだよ」と言えば彼はすぐに頬を染めて機嫌を直してくれるのに。
それなのに、今日それを言ったら「ふざけんなバカ」と言われてしまった。
これはしばらく仲直りできそうにない。
とりあえず、家に帰ってグリーンの喜びそうな台詞でも考えるとしよう。
あれから僕は家に帰ってすぐに自分の部屋に向かい、ベッドに座って天井を見上げながら色々と考えを巡らせてみた。
「許してよ。誰よりもグリーンが一番だから」「グリーンは優しいから、僕のこと許してくれるよね」「君に敵う人なんていないよ」「愛してるよグリーン」「誰にも触れさせたくない」「僕には君しかいないんだ」
段々と謝罪の言葉からかけ離れていっていることは、今の僕にはどうでもよかった。
グリーンが許してくれさえすれば、それでいい。
少し…いや、すごくキザな台詞ばかりで、考えた自分自身でも鳥肌がたちそうなのだが。
「…あ」
しまった。ジムに帽子を忘れてきてしまったみたいだ。
…まあいいや。どうせ今からまた謝りに行くし。
はあ、と軽くため息をつくと、ママが一階から「レッドー!」と僕を呼んだ。
僕は一階におりてお母さんのところへ向かう。
「なに」
「グリーンくんが来てるわよ」
これは驚いた。
まさかグリーンから謝りにくるとは…。
「これ。帽子。忘れてったろ」
「………」
ああ、なんだ帽子か。
グリーンはやっぱり仲直りする気はないらしく、帽子を僕に押しつけてからすぐに来た道を戻ろうとした。
「そんだけ。じゃあな」
「あ、グリーン…」
言わなきゃ。たくさん台詞考えたんだから。
でも、やっぱりこういう時に限ってあれだけ考えた台詞は全部頭から抜けてしまっていて、口から出た言葉は「あ」とか「えっと」ばかり。
グリーンは「何もねぇんなら呼びとめんな」と言って僕に背を向けてしまった。
仕方ない。こんな時は、
「っん」
僕はグリーンの腕を引っ張ってこちらを向かせてから半場強引に口づけた。
目の前で顔を真っ赤にしたグリーンは「ななな何しやがっ」とかよく聞き取れない声で言っている。
「ごめんね。仲直りしようよ」
僕がそう言うと、少し納得いかないというような表情をしてから、彼は赤い顔のまま無言で頷いた。
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喧嘩赤緑。
どんな理由で喧嘩したのかは、皆様の想像におまかせします^^
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