□おかしいぞ
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今日は機嫌がいいから、とわざわざ徒歩で大好きなグリーンさんのいるジムまでやってきた俺。
いくら機嫌が良かったとはいえ、ワカバからトキワまで徒歩で来るのはやはりキツかった…


歩き疲れたのと、緊張で早まる心臓を一旦深呼吸で落ち着かせ、ゆっくりドアに手をかけそのままガチャ、とドアノブを捻った。


「グリーンさーん…ゴールドですけど…」


ドアから顔だけを覗かせ少し静かな声でグリーンさんを呼ぶ。
が、反応がない。
どうしていいのかわからなくなり、ゴールドはおろおろと辺りを見回す。
すると、人影が奥からこちらへ向かって歩いてきているように見えたので、グリーンだと思いゴールドはにやつく表情も直さぬまま心を踊らせ口を開いた。


「もうグリーンさん、遅いですよっ」


「……きみがグリーンになんの用かな」


返された言葉と声の違いに思わず「えっ」と声を漏らし、にやついていた表情を一気に引きつらせると同時に袖で両目を擦った。

…うん、見間違いなんかじゃないみたい。



「レッド…さん…」

「………」


やばい。これはやばいぞ。
グリーンがここにいないとわかったゴールドは、失礼しましたと情けない声で呟いた後顔を引っ込めドアをガチャリと閉めた。


半場逃げるようにして猛ダッシュ。
息も上がってきて、気がつけばニビにつく頃になっていた。


「な、なんでレッドさんがトキワジムに…」


頭の中に浮かんだ疑問がそのまま声になり、耳を通してまた返ってくる。
考えれば考えるほど混乱して、ようやく「それなら、グリーンさんは今どこにいるんだろう」という最もな疑問に行きついた。

レッドさんのことは、グリーンさんに訊けばいいや。


さて、どこを探せばグリーンが見つかるのかとゴールドが必死に頭をひねっていると、なにやらニビジムの辺りが騒がしいようだ。

こんなことをしている場合じゃないとはわかっているのだけれど、何せ好奇心旺盛なもんで。

そう都合のいい解釈をして、俺はニビジムへと足を進めた。


すると、ジムの入り口辺りに人だかりができているではないか。
なんなんだろう。
ああもう、ちょっ見えない…

身長ではやはり敵うはずもなく、それなら、と俺は人と人との間をすり抜けるようにして奥へとずんずん進む

こーいう時に身長低いと便利だよね。



「ちょ、おい…通らせ、」

「きゃーっグリーンさんに触っちゃった!」

「あっずるい私も!」

「グリーンさん、サインくださいサイン!」


あー…グリーンさんグリーンさんって、もーうるさ…
…グリーンさん…?



「サインとかはちょっと…。それに俺、今日約束あるんで、」

「いやーん、もしかして彼女とか!?」

「うそー!」

「ちっちが、」



あーあ、グリーンさん困っちゃってるよ。

じゃ、そろそろヒーローのおでましってとこかな。


「グリーンさ、」

「グリーン」



…かぶった



「…レッド…?」


しかもそっちっすか。
うわ、俺もうショックで喋れない。
つか立ち直れない。


「やだ、なあにこの人」

「グリーンさんのお友達かしら?」


ああ…もう少し俺の身長が高ければ俺の方に気づいてもらえたのかな
前言撤回。全然便利なんかじゃねーじゃん。こんな身長。
むしろ逆だし。不便だし。
ああもうやだ…



「グリーン、行くよ」

「えっあ、あぁ…」


…レッドさんそれグリーンさんの手…俺もまだ握ったことのないグリーンさんの手…


レッドさんは女の子にもお構い無しに、グリーンさんの手を引いて人の群れから出ると目にも止まらぬ速さでボールを投げ、砂ぼこりに紛れてグリーンさんとともにどこかへ飛んでいってしまった。



あれっちょっと待てよ、さっきグリーンさんの言ってた約束ってレッドさんのこと?
…いや、そんなわけない。
だって俺も今日…

あれっでもグリーンさんレッドさんと手を繋いでどっかに飛んで…
いや、ないない。

あれっでもでも…







ゴールドは目の前が真っ暗になった…▼






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続く…かもしれない


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