§Dear Families§

□☩賽は投げられた☩
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目を閉じて、体の力を抜いて。
覚悟は出来た。
さあ、



☩賽は投げられた・1☩



「呼ばれて(ないけど)、飛び出て、ジャジャジャジャーン、ってな。助けに来たぜ、千夏ちゃんv」

ちょっとどころではなく、かなり古いネタをブチかましながら異世界への第一歩を踏み出した訳だが。
・・・アレ?居ない・・・?

「おい、どーいう事だよ、バカ千智」

慌てて周囲を探ってみたが、千夏の気配は無い。
いまいち状況が呑み込めなかったので、通信機越しの千智(と書いてバカと読む)に問い掛けてみる。

『ワリィ、なんか3年位ずれたっぽい』
「はぁ?」
『千夏が呼んだ時間に辿り着くまで、多分3年位?かかるから、まぁ頑張って生き抜いて目的果たせよ』

おい、ちょっと待ちやがれ。つまりなんだ?・・・失敗したって事かよ!

『ちなみにこの通信もう切れる。じゃあな★』

プチ。

どうも、初めて使う能力が案の定というかなんというか、中途半端に失敗したらしい。目指した世界には辿り着いたが、辿り着きたかった時間の3年も前にやって来てしまったらしい。
それなのに俺をこの世界に送り込みやがった張本人は、悪びれもせずいけしゃあしゃあと言いたい事だけ言って通信を切りやがりました。
トリップしたら通信は1分ももたないとは判っていたが、こうもタイミング良く切れられると妙な作為の影を感じる。ので、

「ちょ・・・死ねぇええ・・・この野郎、マジ一回死ねぇぇえええ!!」

通信機を握り潰しながら叫んでみました。
一回死んだらもう死ねないとかそういうツッコミはノーセンキュー。あくまで気分の問題だから。
まー、俺の切なる叫びも通信の切れた今、というかそもそも通信機が壊れているから、千智には届く筈もなく。それより周囲からの視線が痛い。

「えーと・・・失礼しました?」

視線の来る方に目を向けてみると、現代日本なら警官すら裸足で逃げ出しそうな銃刀法違反の嵐でした。
しかも、何も持っていない人だって、戦闘体勢じゃない訳じゃなくて、ただ単に能力者だから武器要らないだけだよな?!
・・・って、この世界、ワンピの世界かよ!!

「テメェ・・・此処が何処だか判ってんだろうなぁ!」

うわーい。素敵クロワッサンヘア・・・冗談、サッチが居るなー。えーーー、原作前ですかー?

「あーあーあー・・・えっと・・・"白ひげ"の船・・・だったり?」

俺の足元の可愛い白のクジラちゃんからして、本船モビーディック号ですよね。ねぇ、泣いて良い?

「何も知らんガキという訳ではないらしいな」

あれ・・・墓穴掘ったっぽい。・・・完全戦闘モードだなー。あー、あの人幾らで売れるんだろ。
リアルに『君の瞳は100ct』だもんな。アレ?100万Vだっけ?まーいーや。

「おああ・・・ワザとじゃないんス・・・って言ってもダメ?」
「当然だろい」

えへっ、と笑ってみたが(我ながらキモい)、当然通用しなかった。
指先が青く揺らめき始めているマルコもまた、完全に戦闘モードだ。・・・不死鳥はちょっとだけ見てみたい。

しかし、ここまでビシバシ殺気を向けられるとこっちまで闘る気になってしまうじゃねーか。千嘉さんや兄貴、千夏と違って、俺(と千智)は戦闘は好きだし、場合によっちゃ殺し合いだって楽しめる。
ちょっと試してみたが、チャクラも練れるようだし、この分ならBASARAも使える。戦闘になっても何ら問題はない。
懸案事項だった"覇気"についても、殺気とは少し違うこの威圧感が"覇気"なのならば取敢えず大丈夫そうだ。
だけど、ココで下手に闘って"白ひげ"と敵対するのはかなり拙い。
時間がズレたとはいえ、この場所に出たって事は、いつか(・・・3年位とか言ってたな)必ず千夏は此処に来る。
ならば、何とかしてこの船に置いて貰う、っていうのが一番確実で、楽な手だ。
いくら腕に覚えがあるといっても、たった一人でこの規格外な世界をあてもなく彷徨う程俺はマゾじゃねーし。ついでに、確実な手掛かりを一時の楽しみの為にみすみすふいにする程馬鹿でもない。
頑張れ俺!殺気に反応するな!殺気を漏らすな!我慢だ、我慢。

「えーと・・・パーレイの要求って可能ですか?」

"パーレイ"はカリビアンな海賊の方のシステムだけど、コッチにもあってくれるって信じてる!
デービー・ジョーンズだって共通なんだから、イケる!・・・筈。
これで無かったら笑えねー、なんて内心は顔に出さず警戒を露に突き刺さってくる視線を真っ正面から受け止めてみせる。
それに対して、マルコとジョズ、サッチ(つまり、この場で最も力のある三人)が互いに目配せをしあってから改めて俺の方を見てきたので、両手を挙げて敵意の無いことをアピールしてみた。
・・・どうやら、この世界にもパーレイはあるらしい。あとは"白ひげ"の裁量次第、というところだな、多分。

「付いて来な」

そう言って歩き出したマルコの後に黙って続くと、両脇にジョズとサッチが付いて来た。警戒を解く気はねーんだろうな。まー、当然の対応だろ。



さあ、海の王者と謳われる男との真っ向勝負といきますか。
畏れはない。どころか、こんな状況なのに楽しくて仕方ねーよ。



(賽は投げられた)
―――投げたのは、俺だ。









++++++++++++++
しかし、サッチとかジョズの口調がいまいちわかりません。頑張ろう。

一つ補足ですが、主人公を現代からワンピ世界に送った千智の念は『3等親以内の家族の危機に、同じく3等親以内の家族を送り込む』事が出来るというもので、送り先の状況とか場所とかは行ってみるまで判りません。



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