短編
□飛び降りた
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姉×弟(吹雪)
自殺もの
ひゅうっと風が私達の頬を撫でた。目を瞑るとどうでもいい日々の思い出が次々に浮かんでは消える。風が私達の背を押す。風が私達を急かす。待ちきれない、早くしろ、せっかちねと隣を見れば隣も笑った。繋がれた手がギュッと握り締められた。うん、大丈夫。私達は一緒だもの。どこへだっていける。
姉さんのか細い手をギュッと握りしめたら姉さんは笑った。つられて僕も笑う。目を瞑るとなぜか藤原と亮の顔が浮かんだ。ひゅうひゅうとはためく衣服、姉さんのスカートから覗くすらりと伸びた脚。これで見納めかと思えば勿体無くも感じた。
風の呼ぶまま私達は一歩踏み出した。
体が重力に従って下へ下へと落ちていく。
お互い離れないようにギュッと手を繋いで。
最後の瞬間まで互いを見つめられるように目を開いて。
落ちていく。
不思議とゆっくりに感じられた。
私達は未来になんの希望も抱いてはいなかった。抱くことなんて出来なかった。
世間体を気にして、なんてバカみたいなのだろうか。僕達は許されていなかった。
誰にも相談することなんて出来なくて。
大それた未来なんて望んでなかったのに。
小さな願い、それすら叶わない。
ならばいっそのこと誰もいない世界で二人で暮らさないかい?
私は即答した、肯定の言葉を。
僕は嬉しかった。もう邪魔されることはない。
ごめんね、明日香。
ごめんね、明日香。
あなたの兄さんを許してやって。
君の姉さんを許してやって。
ごめんなさい、お母さん。
ごめんなさい、お父さん。
私は禁忌をおかしました。
僕は禁忌をおかしました。
私は弟が好きなんです。
僕は姉が好きなんです。
勝手を許して下さい。
だけど追い詰められた僕達にはこれしか思いつかなかったのです。
愛してるよ、吹雪。
愛してます、姉さん。
血が繋がっている、ただそれだけで私達は引き裂かれるのです。
ならばそんな世界を捨ててしまえと。しがらみのない世界で共に生きようと。
例え地獄に堕ちてしまっても吹雪となら耐えられる。
姉さんとならきっと耐えられる。
ごめんなさいごめんなさい。
ごめんなさいごめんなさい。
ぐしゃりと嫌な音がして地面に私達は叩きつけられた。それでも手はしっかりと繋がれたまま、だった。
姉さんは笑っていた。やっと、やっと解放される。そして地に僕達は叩きつけられて潰れた。
!!!!!
あんまり重くしないようにしようと短めであえて書いてみた。
これを書くに至った経緯は不明。
姉さんって呼んでもらいたかっただけかもしれない。