お兄ちゃんの恋愛事情

□其の二、馬鹿女
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「ねえ、お兄ちゃん」

「何だ…今、飯食ってんだよ」

「いつ連れて来てくれるの?」

「…あ?」

「もう、しらばっくれないでよ、彼女!」

「彼女…? 何だよ、そりゃ」

「やだ、酷い、私、楽しみにしてるんだよ」

「…だから何の話だ」

「も〜先週言ってたじゃない、職場の彼女を連れて来るって!」

「…ああ、アレか」

「アレか、じゃないよ!しっかりしてよね」

「お前の方こそ変な勘違いしてんじゃねえ、ありゃあ彼女なんかじゃねえよ…ただの職場の事務の、馬鹿女だ」

「酷い! 恋人を馬鹿女呼ばわりなんて!」

「うるせえな…だから恋人なんかじゃねえんだよ、勝手に思い込むんじゃねえ、迷惑な話だ」

「…でも家に連れて来るなんて、ちょっとは特別な人なのよね?」

「知るか…あいつがお前に会ってみてえってうるせーから根負けしただけだ…、飯食ったしオレは寝るぜ」

「あっ、歯磨きしてよー」

「チッ」


間柴は食器を片付けると洗面所に入って行った。


「何よ、照れちゃって…」

「…何か言ったか?」

「何も!」


もうお兄ちゃんの地獄耳…。


あんな風に言ってたけど、きっと恋人なのよ。

でも、もし違っているとしても何とかその人とまとまってくれないかな…。

そうしないと私と幕之内さんの間にある障害は、いつになっても減らないんだから。

ここは一つ、妹である私が一肌脱ぐしかないわ。

それにしてもさっきの口ぶりだと、ただ待ってるだけじゃいつ相手の人に会えるかわかったもんじゃない。

事務所の人って言ってたけど、馬鹿女って…お兄ちゃんたら可愛げない事言って、嫌われちゃったらどうするのよ!

妹の私に会いたいだなんて…お兄ちゃんに興味がある証拠なんだから。

もっと大切にしてよね。


一体どんな人なんだろう。


何とかしなきゃ。







To be continued
其の三


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