Erie
□@昔の女
1ページ/4ページ
♪エリー マイラ〜ブ ソスウィ〜トゥ♪
カラオケボックスに、木村の歌声が響き渡る。
「しけた歌、唄ってんじゃねぇよ」
鷹村は、面白くなさそうに野次を入れた。
木村にしたら、流行りの歌なんかに興味ない鷹村に気を使って、選曲したつもりだった。
「ヘイ、すんませ〜ん」
「いやぁ、木村さん、歌上手いんですね〜」
そんな木村に、拍手をしながら必死に気を使う一歩。
「コイツはよ、いつもこういう女が好きそうな歌ばっか唄ってよ、たらしこもうって魂胆なんだぜ。ま、上手くいった試しがねえが」
茶々を入れる青木。
「うるせえ」
「まあ、まあ」
一同を宥める板垣。
いつもの鴨川ジムの面々だ。
「んじゃ、そろそろ帰るとするか」
夜の歓楽街。
街行く人は皆、身も知らぬ人ばかり。
「おい、ちょっと…」
突然、鷹村が前方を横切る女性の肩を掴み、声を掛けた。
「なあにぃ?」
鷹村の顔に、僅かに落胆の色が浮かぶ。
「あっ…と、すまねぇ。人違いだ」
今頃、こんな所にいるわきゃねぇか…