銀魂SS、長編
□空行く君と血を行く兎:第一章
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「……おい」
──ふわふわした意識が、そのドスの効いた声で、一気に現実に叩き戻される。
「大丈夫か? こんな所で寝てんと、風邪ひくぞ、あんちゃん」
ぼやけた視界を振り払うように、目をこすると、黒色の中国服を着、色素の薄い金髪、薄く生えた無精髭を生やした男が、けだるそうな目で辰馬を見ていた。
「……おんしゃ〜誰じゃぁ?」
「お前さんこそ誰──そこで寝てられたら、俺等が仕事できねぇんだ。とにかく、立て」
そう、面倒くさそうに言い、大の字で寝ていた辰馬に、手を差し伸べる……
男なのに、真っ白なその肌、日を嫌うようにさされた番傘とマント。
「おぉ、ありがとうきに……おんし、夜兎がか?」
「ああ……まぁ、見りゃわかるかァ」
苦笑して、己の傘を見つめる男……立ち上がって並んでみると、181pある辰馬よりも、少し背が高かった。
「おまん、背ぇでっかいの〜わしも結構高いほうなんじゃがのぅ」
話しかけるが、返事が無い。
不思議に思い男を覗き込むと、その目は、辰馬ではなく、いつの間にか背後にいた青年をみていた。
「阿伏兎、このお兄さん、どうする?」
「団長……部屋で書類整理してたんじゃなかったんですかい?」
「飽きたから、気晴らしにね」
人差し指をピンッと立て、笑顔で言う……笑顔といっても、青年の顔には、すっと、さわやかな笑顔が張り付いていた。
「で? どこまで終わったんだよ、団長」
「ん? 三枚書いたよ」
「……半分って問題じゃねぇな、三分の一も終わってないじゃねぇか!」
「──阿伏兎、お兄さんが、困ってるよ?」
話しをそらすように、さっきからキョトンとたっていた辰馬を見る、青年。
「……忘れてた、おい、お前さん」
「なんがか?」
「どっからどうやってこの星に来たかしらねぇが、今すぐ此処をたちなぁ……すぐに戦場になるぜ?」
「戦場? ってか、此処はどこなんじゃ? わしゃ〜なんでこがなとこにおるんじゃっけ……」
それを聞いて、顔を見合わせる阿伏兎と呼ばれた、男と、青年。
「……此処は、とある星の浜辺。これから、滅ぶ星だァ……巻き込まれたくなきゃ、ここに来た手順で帰れと言おうとしたんだがァ……覚えてねェのか?」
「全くもって思いだせんき……滅ぶ?」
「ああ、理由は言えないが、今からな」
「おんしらが滅ぼすんがか? たった二人で?」
「うん。二人で大丈夫だよ? こんな星。
ね? 阿伏兎」
「ああ、そこらの天人なんざ、俺等にとっちゃ、虫けら同然だからなぁ」