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□ほんの悪戯
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「……なにがしたいんだ、アンタ」

眠そうに不機嫌を露わにした声色で話す阿伏兎の言葉を空気のように無視して、神威は自室のベッドで寝ていた阿伏兎の服の中に侵入させた両手を滑らせていく。

「なにって……ナニかな、やっぱり」

ニッコニコ笑顔を全開に、当たり前のように告げる神威の手は片方をそのままにもう片方は阿伏兎の頭を抱き寄せるように添えられている。

「っこのすっとこどっこい! 俺は朝から仕事入ってんだ、寝かせろ団長」

「寝てていいよ、勝手にやってるから」

「なに言って……ひぁッ」

引き剥がそうと伸ばした腕が神威を掴む前に、あらぬところへ手が添えられる。
無意識にも跳ねる身体を、面白そうに見つめた神威は止まりそうも無い。

「俺さ、阿伏兎の堪える顔好きかも」

馴れたように手際の良いソレに、必死に声を押さえ目を堅く瞑る表情を見てそんなことを呟く神威に、出るのは溜息ばかり。

「ふざけ、んな……」

「そう言わないでよ、単なる可愛い夜這いだよ?」

「可愛くも、ねぇよ。すっとこどっこい!」

「うっそだー、可愛いって思ってるくせに」

「夜這いを可愛いと思う訳な──ッ!」

全部話す前に唇に人差し指をあてがわれ制される。窓の外は何時も暗黒、朝も昼も無い宇宙の夜は長く長く……

「阿伏兎、俺の事好き?」

「嫌いに見えますかね?」

「あははっ、かわいいなぁ……でも分かり易く言ってくれなきゃ寝かせないよ?」

「……大好きですよ、死ね馬鹿団長が」

ほんの悪戯…
否、される側は必死の悪戯?

(いい度胸だね、決めた寝かさない)
(ちょ、約束が違う──ッぁ!)

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