お題
□ 1.アンタといると疲れる
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1.アンタといると疲れる(3Zパロ)
いつもと変わらぬ火曜日。
もう一人の保険医に、保健室の番を任せ、屋上に寝転がり、空を仰ぎ見ていた。
……ハッキリいって、やる気がしなかった。
保険医と言う仕事に付いてから、何年が過ぎただろう……日溜まりの中の保健室で、生徒が来るまでは、コーヒーでもすすって、暇を持て余す──非常につまらないこんな仕事だが、俺の性には合ってるようだった。
それでも最近、やる気が無くなっているのも事実だった。
「変わりばえの無さに飽きたのかねぇ……」
天を見れば、かわらぬ太陽、横を向けば、かわらぬ校舎。
屋上を見渡したって……ん?
変わりばえしないとおもって屋上を見渡す俺の視界に、桃色に光る髪が見えた。
──この学校に、桃色髪の野郎はいなかったはず……じゃあ……
「おい、そこの桃色髪。ここの学生じゃねぇよな?」
「……ん? 桃色髪って、俺の事?」
そういって、背を向けていた桃色髪がこちらをむく。
「そう、お前さんだァ。此処は生徒侵入禁止のうえに、他校の学生は入っちゃいけねぇんだってんだ」
呆れ顔で話しているだろう自分の頭を掻きながら、言う。
「……おじさん、教師?」
おいおい……俺の話は無視かよ。
「まぁ、教師っちゃぁ、教師だが……保険医だ」
「保険医? そんな人が、真っ昼間に屋上なんて、居ていいの?」
「不良の始末も、俺の仕事何でなァ……ちなみに、おじさんって歳じゃねぇよ」
「……不良の始末って、やり合ってくれるってこと?」
「う〜ん……時と場合によ「じゃあ、強いんだ、お兄さん」
「はぁ?まぁ……多少は」
「じゃあさ、俺とやり合おうよ。丁度暇だからさ」
人差し指を立てて、自分勝手にそう言ったと思えば、次には、喧嘩なれしたであろう右拳が、俺に飛んできた。
「……暇って理由で喧嘩すんじゃねェよ、このすっとこどっこい」
その拳を、軽く避け、言い放つ。
……どうやら、その行動が、引き金を引いたらしい──笑顔を一層引き立てた男は、体制を立て直すと、また俺に向かってきた。
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「へぇ……本当に強いんだ」
「だから……言ってんだろォ?」
あれから何十分が過ぎただろうか……いや、チャイムが何度も聞こえたがら、何時はゆうに過ぎてるのか。
気がつくと、周りは日が落ち始め、暗くなりつつあった。
「で? いつまで此処にいるんだ?」
「お兄さんがぶっ倒れるまで」
「じゃあ、一生帰れねーよ。もう遅い、送ってくから、帰りなァ」
「送ってってくれるの?」
「他校のとはいえ、こんな時間まで付き合っちまったんだァ。教師として当然だ」
「ふぅん……じゃあ、お願いしよっかな」
素直に床においていた学生鞄と学ランを拾い、屋上の入り口に歩く。
それについて行き、校内に止めてある車まで歩き、誘導をうけながら、男の家までたどり着く。
「……電気ついてないなァ。両親は?」
「いないよ? 今は、妹と二人」
「へェ……案外苦労してんだな、お前さん」
まぁね、そう言って、玄関まで歩く男。
「……そう言や、お兄さん。名前は?」
突然振り返って、訪ねられる。
「阿伏兎だ。おもねるの阿に、伏せるの伏に兎」
「面白い名前だね、阿伏兎」
「そりゃ、どーも──お前さんの名前は?」
「神威だよ。神に威嚇の威──阿伏兎、気に入ったよ。また明日、やり合おうね」
「え……ちょっ!」
やり合おうね──だ?ふざけるなァ!
それが、神威との出会いだったきがする。
「阿伏兎〜! 今日もやり合おうよ!」
「阿伏兎先生だろが! だから、他校の生徒が入ってくんな!」
「そんなことより、やり合おう!」
「……本当……
アンタといると疲れる
なぁ」
溜息まじりに言い、キシッと言う音を立てて、椅子から立ち上がる。
──面倒でも断ることも、追い出すこともしないのは、なんでなのだろう……
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(C)確かに恋だった