book


□I love you…
1ページ/1ページ

最近……の話だ。
ふとした拍子に、あの騒動の時の団長を思い出してしまう。

「心配して必死こいて船手漕ぎで来て見れば」

確かに、無いとは思いながらも心配はしていた。
相手が自分の前からいなくなるのではと、嫌な予想ばかり膨らんだのも覚えている。

なんで、一上司にここまで心配しなきゃいけないんだ……只の上司だろ。

「阿伏兎ー、なに湿気た面してんの?」

背後に気配。と同時に背中に感じた温もりに振り向けば、何時もの笑顔の団長がいた。

「いや、考え事をな……アンタこそ何やってんだ?」

「阿伏兎で暖とってる」

「人をカイロ替わりにするな!」

そう言って引き離そうとした腕は、呆気なく掴まれ身動きが取れない。


「……ねぇ、阿伏兎」

暫く黙ったままだった沈黙を、団長が破る。
その声色は何時になく真剣味を帯びていて、無意識に聞き逃さぬように耳を傾けた。

「あの時さ、心配したって本当?」

……こりゃ、驚いた。
相手が自分と同じ事を同じ現状を考えていた事に。
されたくなかったですかね?と冷静を装って告げれば、返事がわりに横に二回振られる頭。

「嬉しかったよ、駆けつけてくれて」

その言葉一つで、揺らぐ心に内心舌打ち。
続いて何時もと違う、綺麗な笑顔なんざ見せるから……

「居なくなられちゃ、困るんだよ」

だから居なくならないでくれ。

せめて俺より長く、最期はアンタに殺されたいから。

それに何より……

I love you

th
ink tenderly of you for


(なんて、言えるわけもないがな)

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ