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□I love you…
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最近……の話だ。
ふとした拍子に、あの騒動の時の団長を思い出してしまう。
「心配して必死こいて船手漕ぎで来て見れば」
確かに、無いとは思いながらも心配はしていた。
相手が自分の前からいなくなるのではと、嫌な予想ばかり膨らんだのも覚えている。
なんで、一上司にここまで心配しなきゃいけないんだ……只の上司だろ。
「阿伏兎ー、なに湿気た面してんの?」
背後に気配。と同時に背中に感じた温もりに振り向けば、何時もの笑顔の団長がいた。
「いや、考え事をな……アンタこそ何やってんだ?」
「阿伏兎で暖とってる」
「人をカイロ替わりにするな!」
そう言って引き離そうとした腕は、呆気なく掴まれ身動きが取れない。
「……ねぇ、阿伏兎」
暫く黙ったままだった沈黙を、団長が破る。
その声色は何時になく真剣味を帯びていて、無意識に聞き逃さぬように耳を傾けた。
「あの時さ、心配したって本当?」
……こりゃ、驚いた。
相手が自分と同じ事を同じ現状を考えていた事に。
されたくなかったですかね?と冷静を装って告げれば、返事がわりに横に二回振られる頭。
「嬉しかったよ、駆けつけてくれて」
その言葉一つで、揺らぐ心に内心舌打ち。
続いて何時もと違う、綺麗な笑顔なんざ見せるから……
「居なくなられちゃ、困るんだよ」
だから居なくならないでくれ。
せめて俺より長く、最期はアンタに殺されたいから。
それに何より……
I love you
think tenderly of you for
(なんて、言えるわけもないがな)