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□また一年…
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「団長、今帰ったが……なんだ、これはァ」
船の中に入って、はじめに目に付いたのは、散らかりに散らかった部屋と、ツンッと鼻に来る、血の匂いだった。
正月そうそうに、誰か殺ってきたのか……
足の踏み場を探し、部屋の奥にあるベッドに向かう。
「団長? 居るんだろ?」
ベッドの凹凸に向かって、問いかける。
ところどころ赤く染みがあるのは、団長についた返り血だろう。
──血は落ちにくいんだってんだァ……たくっ。
「寝てるのか? 団長……」
返事がない。上下に規則正しく動いている布団から、屍ではないようだ。
「……阿伏兎、どこいってたの?」
布団がしゃべった……じゃねェや、団長が布団の中から言う。
「言っただろ、任務で遅くなるって……誰か殺ってきたのか?」
「うん……暇だったんだヨ、阿伏兎いなかったし……」
暇つぶしに殺られる野郎も、可哀相にな……
「年明け、五時間後だなァ……団長? 遅れたが「阿伏兎、こっちきテ」
布団から手だけ出して、手招きする団長。
「なんですかい?──おわっ!」
ベッドに近づき、凹凸の隣に腰掛ける。
一層キツくなった血の匂いに、顔をしかめながら、布団をめくると、びっくり箱のように、団長が抱きついてくる。
「阿伏兎のバ力、待ってたんだからナ?」
「……悪かったな……俺も早く戻りたかったんだぜ? 団長」
肩に顔をうずめた団長を見て、クシャリと頭を撫でる。
「少し遅れたが、年明けでも祝うかァ?」
「……うん」
顔を上げて、いつもの笑顔を見せる団長。
また一年…
(その笑顔。いつもより優しく感じたのは、気の所為か……)
(団長、今年もよろしくなァ)
(阿伏兎こそ^^……そうだ)
(なんだ?)
(お年玉ちょうだい?)
(へいへい……ガキかってんだ、たくっ)