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□真夜中に迎えに行くよ
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──大晦日。
夜も深まり、普段ならば子供達は就寝している時刻。
この日だけは大人達も年が明け、共に始めを祝う。
ここにも一人そんな日を楽しんでいる子供がいた



「ねえ、まだ行かないんですかぃ?」

縁側で足をぶらつかせながら中にいる大人に呼び掛ける子──総悟だ。

「そーちゃん。まだ十四郎さんだって来てないんだから、そんなに焦らないの」

それを窘める姉のミツバ
十四郎、と出た言葉にむ、と頬を膨らませると声を上げる

「またあいつ、…早く来やがれ!」

ミツバと勲が目を合わせてクスクスと笑い勲が立ち上がって総悟のすこし後ろに腰掛けた

「トシが来たってまだ早いぞ。そんな急いだって時間は進まないんだから。ほら、お前も中で料理を食おう。美味いぞー」

そりゃ姉上のだからなと自慢げに呟いたときジャリ、と小石を踏む音が聞こえ人影が現れた


「…こんばんわ」
「おおトシ!来たか」

「寒かったでしょう。上がってください」

勲とミツバが口々に声を掛ければ総悟がまた拗ねたように口をすぼめた


「土方、遅ェや。もっと早く来いよ」


時間は遅れてなどいない
むしろ少し早いくらいだ
お決まりと云うように悪態を吐く総
悟に十四郎はふぅと小さく溜め息を吐き出す


「先輩、すみません」

態とらしくそう告げれば総悟はふんっと鼻で笑い勲らの元へと向かった










「にしても総悟。何でそんなにも早く行きたがってるんだ?」


4人でおせち料理をつつきながら勲が声をかけた
それに詰まったように口をもごもごさせる総悟を見てクスリとミツバが笑みを浮かべるとその理由を告げた

「総司くんと約束してるのよね」
「あっ、姉上!」

総悟が理由を言われ焦ったように見上げるも悪びれることなく微笑んだ

「いいじゃない、どうせ後で会うんだから」
「それ、は…っ」

「ほーう、あちらさんも初詣に行くのか」
「そうみたいですよ。それでそーちゃんも楽しみにしてて」

もう誤魔化しが利かないと悟った総悟はぱくりと大きめのかまぼこを口に入れる

「本当二人は仲いいなー!なあトシ?」
「あ?…みたいだな。けどあのガキが行くってこたァ勇さんや歳三さんも来んのか?」
「さあ…?けどミツさんは行けないと仰っていたから、勇さんは来るでしょうね」

昼間買い出しに言った際、女同士の会話により分かったことらしい。
それにたまたま連れ添った総悟と総司が約束をし
、楽しみにしているということだ。


「早く行きてーなー…」


くっきりと浮かぶ月を見上げて小さく声を紡いだ──



真夜中に迎えに行くよ
(はやくきみにあいたいんだ)







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