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□つないだ手はあったかい
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それ以上でも、それ以下でもない。
ガン、と後頭部を鈍器か何かで殴られたような、衝撃。
え、なんでショック受けてるんだ私?
嬉しいじゃないか。
親友って思われてるんだぞ。
なのに、なんで!?
私は、まだその先の関係を求めている?
これ以上の関係…?
そんなの、ありえない!

「……澪?」

しばらく黙っていた私を不審に思ったのか、律はまたさっきみたいに、私の顔を覗きこんだ。
でも、さっきのような胸の高鳴りはもう、感じない。

「…私、気分悪いから…帰る。」

一言だけ言って、音楽室を後にした。
なんだか居た堪れなくなって、走り出す私。
そのまま玄関へと向かう。
早く、帰りたい。
その思いだけが、今の私の思考を支配している。

玄関で靴に履き替える。
あそこから離れられた事にホッとしたと同時に感じた頬の違和感。
生暖かい水が頬を伝い、零れ落ちる。
これは何か。
涙だ。

「…なんで、泣いてるんだ。私…。」

律に嫌いって言われたわけでもないのに。
なんで。
訳がわからない。
色んな感情が私の中でせめぎあって、暴走して。
制御がきかない。
涙が止まらない…!

「澪!!」

走ってくる音と共に、今一番聞きたくない声。
でも、追いかけてきてくれた。
その真実が、また私を泣き虫にさせる。

「り…つ…?」

涙と嗚咽に混じった微かな声で絞りだす。
走って来た律は息を切らして、肩を大きく揺らしていた。
息を整えて、私を真っ直ぐに見据える律。
何時になく真剣な顔だった。
でも、すぐにそれは優しい笑みに変わった。

「何で泣いてんだ。…泣くなよ。」

「……っふ、ぅ…。」

言わないで。
そんな優しい言葉を私にかけないでよ。
勘違い…しちゃうじゃんか…。

「……澪。」

「…っう…?」
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