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□せつな空
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という感じで今に至る。
しばらく律について歩いていけば、あまり出歩かないような所へ出た。
途中で花束を買ったりしていれば、もう昼だ。
でも、不思議と腹は減っていない。
そこで律が足を止めた。
もう…着いたのか。

「とーちゃく。」

そう言うと、律はスタスタと先に歩いていく。
たくさん並んでいる墓から、たった一つを見つけ出す。
それから手馴れたてつきで花束をそえ、線香もそえた。
私はその律の隣へ行く。
手を合わせた。

沈黙。

律がどんな顔をしているのか。
気になって、少しだけ目を開けて横目で見る。
なんて、悲しい顔してるんだよ、律…。
いつも見る軽快な笑顔とは程遠い、表情。
私はまた目を閉じた。


それからしばらく経った後。
お墓参りを済ませた帰り道。
私と律は、一言も喋らないまま道を歩いていた。
気まずい雰囲気。
何か喋って、場を盛り上げたいところだ。
…。
…律は…、おじいさん亡くなって…どう思ってるんだろう…。
やっぱり…寂しい……のかな…。
そう考えると、私の胸はぎゅう、と締め付けられるように痛くなった。

「あの、律…。」

「んぁ?」

間の抜けた声と共に振り返る律。
そこにあるのは、いつもと変わらない顔。
私の知っている表情だ。

「寂しいって…思ってる?」

その瞬間に、また律の顔に影が落ちた。
それを見た私は後悔をした。
やっぱり聞くんじゃなかった。

「…別に。…ま、でも寂しくないって言えば嘘になるかな。」

律の言ったその言葉が私の心臓を小突かせる。
自分でも理解ができないこの感情。

「…そうか。」
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