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□つないだ手はあったかい
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「澪、あのな、聞いてくれよ。すげぇんだって。」

引っ切り無しに私に話しかけてくる幼馴染の律。
でも、最近律の声を聞くと、何故だか胸が痛くなる。
いつからだろう。
心が締め付けられるような。
それでいて、とても不思議な感覚。
それを味わうようになったのは…いつからだろう。

「でな…って、聞いてるか澪?」

律が私の顔を覗こうと近づいてくる。
か、顔が近いって律…!

「あ、あぁごめん、聞いてなかった。」

我に返ったようにそう返すと、律は心配そうに少しだけ眉尻を下げた。

「全く。最近の澪、なんか変だぜ?こう…上の空ってーか…。」

上の空…か。
私そこまでボーっとしてるのかな。
そんなことを考えていると、唯が話に混じってきた。
明るいのんびりとした声音が先ほどの雰囲気をぶち壊す。

「ねぇねぇ、りっちゃんと澪ちゃんって本当に幼馴染なの?」

「あぁ、そうだぜ!米粒より小さいときからずっとな。なぁ澪?」

「あぁ、そうだな。米粒よりも小さいときから私たち幼馴染だよな…。」

「澪先輩ツッコミましょーよ!米粒よりも小さいときってどんなときですか!」

今ばかりはツッコむ気力もなく。
適当に流していれば私がツッコまれた。
さすがにおかしいと思ったのか、今度は私お元気付けようとする。

「どーしたんだよ澪、今日元気ないな…そういうときは…ジャーン!」

律はムギが持ってきたクッキーに手を伸ばす。
そのまま掴み取ると、食べろと言わんばかりに私に突き出した。

「我慢せずに食べろって。」

優しくそう言ってくれる。
心臓がトクンと鳴った。
律が取ってくれたクッキーを受け取り、一口食べる。
うん、やっぱろムギが持ってくるクッキーは美味しいな。
自然にその言葉が口から漏れる。

「ん、美味しい。」

お腹もちょうど空いていたしなぁ。
少しだけ満たされたお腹。
でも、それよりも空いているのは胸の方。
早く何かで満たされたいよ。

「ねぇ、りっちゃん。りっちゃんは、澪ちゃんの事、どう思ってるの?」

不意にムギが律に問う。
その言葉にまた、さっきよりも強く心臓が跳ねた。
とりあえずムギの目が光っているのは突っ込まないでおこう。

「え、私?」

…聞きたい。
私は律の何なのかを。

「そりゃあ…。」

その唇から紡ぎだされる言葉は。
私が望む言葉か。
それとも、否?

「親友に決まってんじゃん。それ以上でも
それ以下でもないよ。」
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