オリジナルBL

□恋愛の時間 -夏希-
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地区大会決勝の個人戦の相手が来栖だった。
結果は、俺の判定勝ちだったけれど、正直、今までの対戦相手の誰よりも強かった。
やり始めてまだ4年だという彼のその才能が羨ましかった。
同じ高校に入ってからの部活の試合でもまだ負けたことはないけれど、確実に技術を身に付けているのが分かる。
俺は、ライバルとして高め合っていきたいと思う反面、こいつとは仲良く出来そうにないと思っている。

さっきの会話でも分かるだろうが、奴は女の子が好きだ。とにかく褒める。ナルシストの気もあるな。
付き合った女は数知れずと本人が言っているのを聞いた。
俺とは合わない。
何より、中2の時の試合の後、面を外した俺に向かって、
「お前、女じゃねーか!」
と言った。
試合に負けるより、俺には屈辱的な言葉だった。

あれから同じ高校に入るまで顔を合わせたことは無かったが、同じクラスになり、剣道部でも…。つまり朝から夜までずっと一緒だ…。
ため息がでる。

「ほんと、キレイだよね〜王子様みたぃ」
りょうこさんが俺を見つめながら、ほぅっと息を吐いた。
「王子じゃなくて、姫だろ?女なんだから」
楽しそうに来栖が笑った。
「え〜、なっちは確かにキレイな顔してるけど、男の子だょぅ」
りょうこさんが口を尖らせる。
「夏希、なんて女の名前じゃねーか」
…そう。昔から名前でもからかわれてきた。
りょうこさんがつけたあだ名、「なっち」も女っぽい…。
俺はもう無視して教室に歩き始める。
その後をりょうこさんが急いでついてくる。
今週は来栖が部室の鍵当番だから、すぐに追いかけてこれないことはわかっていた。
「なっち〜、今日もお昼一緒に食べていいかな?」
りょうこさんが上目遣いで聞いてくる。
「それは良いけど…友達と食べなくて良いの?」
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