オリジナルBL

□rain 2
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四月。

「…持ってきました。」
本や資料が大量に入ったダンボール箱を適当な机の上にドサッと置いた。
「ありがと。重かったんだよね、それ。」
一希は、1階の資料室の入口近くに置いてあったダンボール箱を、今は使われていない3階の美術準備室に運んでくれと頼まれた。
頼んだ本人は、この教室に珈琲メーカーまで持ち込んで、まるで自分の部屋のように寛いでいる。
「……夕紀さん。」
「ん?」
「校内は煙草、禁止です。」
「だから隠れて吸ってるんじゃん。」
夕紀は煙草を銜えたまま、珈琲をコップに注いで手渡してきた。
スーツ姿も似合うな…なんて思いながら、一希はコップを受け取った。
「それに、この部屋、美術の樋口先生が使って良いって言ってくれたしね。」
「・・・。」
樋口は去年、美術教師として赴任してきた人で、長身だ、美形だ、なんて、当時は女子から騒がれていた。夕紀とは全然タイプが違う。真面目そうで、正に紳士っていう感じ。今年は夕紀が来たから人気は二分割されたようだ。



あれから、夕紀に会いに行こうとして、アパートの前までは行った。
勇気が出なくて、チャイムを鳴らすことも出来ずに、バッタリ会ったりしないものかと、小一時間うろうろして帰るというのを毎日のように繰り返していた。
近所の人から、よく、変質者扱いされなかったものだと思う。



夕紀に会えたのは、始業式。
体育館の壇上に上がったスーツ姿の夕紀を見た瞬間、驚きの声をあげてしまった。
「夕紀さん!?」
その声に気付いた夕紀がひらひらと手を振った。
全校生徒の注目の的になって、物凄く恥ずかしい思いをした。
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