オリジナルBL

□rain
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三月。

部活の為とはいえ、春休みに学校に行く、というのはとても面倒臭い。
家が近い生徒ならともかく、電車と徒歩を合わせて一時間近くかかってしまう。
その上、帰りに学校から駅へ向かう途中、急な豪雨に見舞われた。
さっきまであんなに晴れていたのに、と、一希は心の中で軽く舌打ちして、雨宿りするために本屋の軒下に入った。
数分経っても一向に止む気配がなくて、一希は溜め息を吐いた。
こんな土砂降りの中、駅まで走ったら、それこそずぶ濡れになってしまう。
最も、今でも制服の色が変わっているくらいには濡れてしまっているのだけれど。
「わっ……凄い雨……。」
本屋から出てきた客らしい声が聞こえて、一希はその方向に顔を向けた。
ふと、彼と目があった。
綺麗な人だ、と思った。
男の人に綺麗なんて表現はおかしいのかもしれない。
耳にかかる髪の毛は少し癖毛のようで、フワフワしていて柔らかそうだ。
「!!ずぶ濡れじゃん、君。風邪引くよ?・・・あっ、そうだ、うちに来なよ。すぐそこだから。シャワー、浴びたほうが良いよ。」
そう言うと、一希の手を掴んで大雨の中を走り出す。
「え・・・ちょ・・・!?」
いきなりの展開すぎて、一希は掴まれた手を振り解けずに、ついていくことになってしまった。

「ほんと、凄い雨だったね。」
連れてこられたのは、二階建てのアパートだった。
最近出来たばかりなのか、入居者募集中の旗が立っている。
薄いオレンジ色の綺麗な外装で、六つドアがある。
彼は道路の反対側の、一番端のドアを開けた。
ドアを開けてすぐの階段を登って部屋に入ると、段ボールの山積みとタンスとベッドだけが置かれてあった。
「散らかっててごめんね。引っ越してきたばっかで全然片付いてなくって。」
言いながらバスタオルを一枚、一希に渡した。
「シャワー、浴びてきなよ。濡れたままだと寒いでしょ?すぐ暖房つけるね。」
「あ・・・。」
何も言えないまま浴室に放り込まれ、仕方なく熱いシャワーを頭から被った。
思っていたより身体が冷えていたことに気付いた。
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